フェアユースという概念は、米国著作権法などが認める「著作物の無断使用に関する抗弁」で、非常に抽象的な規定だ。wikipediaによると、1)抜粋の性質と目的が正しいこと 2)利用された部分の量と価値が適正であること 3)原作品の売り上げの阻害、利益の減少、または目的の無意味化の度合いが小さいことである。有名な判例はユニバーサル映画VSソニーの「ベータマックス事件」で、テレビ番組の録画が著作権侵害になるかどうかが争われた。
いまとなっては馬鹿馬鹿しいが、当時の最新鋭機器の登場と著作権の相克だ。
Wikipedia英語版のMoonwalkの項目にはマイケルジャクソンの映像が掲載されている。その映像には以下のような文言があり、フェアユースを主張している。
- The video shows Jackson as he performs the moonwalk, gliding backwards, during the Motown special. This key part of the performance is the subject of critical commentary. It was the first time Jackson had performed the moonwalk in public, and is said to have boosted his stardom to a new level
- The image is a video from a television programme.
- The video is of lower resolution and quality than the original TV quality (copies made from it will be of inferior quality).
- No free or public domain images have been located for this performance.
- The video does not limit the copyright owners' rights to distribute the single, performance or music video in any way.
- The video is used against critical commentary of the performance, and provides a visual enhancement to the reader.
- The video shows Jackson during the key point of the critcally assessed performance.
- The video is being used for informational purposes only, and its use is not believed to detract from the original single, music video or television performance in any way.
問題は著作権だけでなく、肖像権やパブリシティの権利も係わってくることだ。
NYTimesはマイケルジャクソン死去のニュースで音楽やビデオを多用していたが、これは報道・評論の一部として認められているのだろうか。それとも、個別契約をしたのだろうか。
参考:あなたのお気に入り曲は(代表曲のサワリが聞ける)
【インタビューの抄訳】
Doug Lichtman:新聞業界は、「フェアユース」(批評、解説、ニュース報道、教育、研究、調査等を目的とする場合、著作権者に断りなく使用すること)と「アイデア・表現の二分法」(著作権で保護されるのは表現のみでアイデアは保護されない)を警戒している。つまるところ、記事が再利用されたり、リンクされたりして困っている、情報が広く伝わることは素晴らしいが、ビジネスを守らなければならない。これが議論の出発点でいいのか?
Ken Richieri:そうは思わない。歴史的にそうではないからだ。著作権法の法律家は著作権所有者の視点からフェアユースを見てきたが、新聞社の弁護士は、うまい言葉が見つからないのだが、「フェアな観点」から見てきた。伝統的に、新聞社はフェアユースのユーザーだった。ここにネットだけの経験で話すより重大な「表現の自由」の問題があると思う。新聞社は許諾権者であり、同時に利用者だ。
Lichtman:記事には引用が欠かせないからね。どこに線を引くかについて、新聞業界が探し求めている基準はありますか?
Richieri:みなが基準を探し求めている。コンテンツの制作者であり利用者であるNYTimes.comのようなサイトでは、基準がすでに見つかっていると思う。
Lichtman:フェアユースは基準を明確にしようとしています。いわく、勝手に改変しないこと、著作権者の経済的利益に影響がないことなどです。それでうまくいきますか?
Richieri:そういう基準はアナログ社会ではいいですが、デジタル社会ではだめでしょう。オンライン社会では物事が高速に伝わり、そして、その基盤の経済学(いわゆるビジネスモデル)が未開発です。だから、ルールをつくることが難しいのです。問題は、新聞社がオフライン時代の経済学に変わるものをなかなか作り出せないことで、そういう事態を著作権問題を通して見ているのです。著作権が犯人であるかどうかは、私は確信がないのです。
Lichtman:オンラインで何が変わったのでしょう。一つは明らかにソースが増えたことです。それによって競争が増した。ブログやTwitterはだれでもできます。それによって視点の多様性が増した。むしろ情報の洪水です。もう一つはリンク。リンクによって自分自身が作ったコンテンツと競争しなければならなくなった。
Richieri:私はリンクが著作権違反だとは思いません。リンクはWebをWebたらしめているものです。リンクの著作権云々についての不満は、要するに「リンクのトラフィックを思うように収益化できない」という不満なのです。それが本当に著作権問題なのかどうか分かりませんが、「リンクがあるから、それを読むだけで満足して、私のサイトに来てくれない」という理屈に繋がるのでしょう。私はそれが本音だとは思えません。
Lichtman:ニュース収集サイトではリンクは記事の代替になりえます。AP通信はこの問題について積極的です。記事を集めて見出しを並べる、すると誰もクリックしてサイトを訪問してくれない。大損害だと。
Richieri:それは著作権の問題というより、不公正競争の問題にしたほうが明確だと思います。著作権では「事実と表現の二分法」の議論があります。AP通信が「これらの事実が同じ場所に並べられれば、それは記事の代替だ」という。そうかもしれませんが、それは、著作権法が守ってくれる「表現の代替」ではないかもしれません。
Lichtman:表現を剽窃しないように注意して(元のテキストを書き換えて)リンクすれば、結局同じ問題になるかもしれませんね。
Richieri: その通り。
Lichtman: 著作権の問題ではなく、経済の問題を考えなければなりません。
Richieri: そう。新聞業界は長い間、この問題に対処してきたということを念頭に置くべきです。長いこと、こんなことを続けてきたじゃないですか。あさ起きてラジオをつけると「今朝のNYTimesによると、云々」。
Lichtman: そう。
Richieri: テレビやラジオのニュース番組の支柱であり続けてきたわけです。
