Pages

the Onion:毎日がエイプリルフールの新聞

【エルサレム30日AP】世界ユダヤ教聖職者協議会は30日、蹄の割れた動物の肉を食べることを解禁し、ユダヤ人に「ハムの美味に耽溺してもよい」と発表した。
メナヒェム・サパーシュタイン同会議代表は、「ユダヤの民は、アブラハムとその息子イサック、その息子ヤコブに伝えられた神の命に最も敬意を抱き続けてきたが、時には神の掟を見直し、現代化する必要がある」と述べた。
アメリカン聖職者会議のデビット・フェインバーグ司教によると、解禁によって風習も改められる。「過ぎ越しの祭りの間、蜂蜜を塗ったハムと牛乳をいただくことで、神が我々に乳と蜂蜜の地を与えたことを感謝することになる」......
the Onion : Jewish Elders Lift 6,000-Year Ham Ban

アメリカのパロディー新聞the Onionの記事は、一事が万事、このような架空記事だ。
Onion紙はウィスコンシン大学マディソン校の学生Tim KeckとChristopher Johnsonによって1988年に設立された。しばらくは周辺の大学で発行されていた、ふざけた学生新聞だった。オンラインサイトを作ったのは1996年で、2001年にニューヨークに進出した。2007年にはONN(Onion News Network)を開始、パロディーニュースのビデオ放送を始めた。ラジオもある。

Obama Caught Lip-Syncing Speech(オバマ大統領、口パクだった)

ビデオはCNN風で極めて手が込んでいるので、毎年のように外国の新聞が本気で転載する。
基本的には広告ベースのフリーペーパーで36万5000部。現在、マジソンやシカゴ、ニューヨーク、ワシントンDCなどで無料配布、それ以外の地区の希望者には郵送で販売している。ロサンゼルスなどからは2009年に撤退した。
WSJによると、2006年段階でオンライン広告で1800万ドルを売り上げた。現在ユニークユーザー500万人、2600万PVがあり、例えば、シカゴトリビューンの半分程度のアクセスを集めている(google ad plannerによる)。

ところで、そこに載った広告は信じてもいいのだろうか。

アメリカのパロディ番組の伝統は"That Was the Week That Was"や"Laugh-In"に始まり、現在では"Saturday Night Live"に繋がっている。Comedy Centralの"The Daily Show"や"The Colbert Report"も偽のニュース番組風だ。

パロディでは、1915年創刊の仏週刊紙カナール・アンシェネ(Le Canard enchaîné)のほうが先輩格。もっとも、パロディや皮肉だけでなく、オフレコすっぱ抜きや政治家のスキャンダルなど、本当のスクープも掲載している。フランスの新聞が紳士協定として政治家の下半身の話は無視してきたためだ。部数は446000部で日刊フィガロよりも多い。

ラジオの革新:民放のネット進出急加速

地域FM局連合が、ラジオのサイマル放送が聞けるiPhoneソフト「コミュニティFM for iPhone(i-コミュラジ)」の配信を開始した。
価格の350円は、開発会社が受け取る。地域ラジオが全国に放送しても、経済的なメリットはほとんどないが、将来的には、iTunes Storeと連携して楽曲を購入できる仕組みや、物販を通して収益化することを検討しているらしい。

先行するKIKERU RADIOは電通主導で、ラジオ日経やTBSのOTTAVA(クラシック系)、東京FM(休止中)が聞ける無料アプリを公開している(PCでも聞ける)。音はかなりきれい。

一方、コンテンツを有料配信する試みとして、TBSラジオがポータルサイト「らじこん」を設立。TBSだけでなく、和歌山放送、ラジオ福島、秋田放送、テレコム・サウンズの5社がコンテンツを提供する。フォーマットは96kbpsWMAと128kbpsPSP/ウォークマン向けの2種。はたして、上手くいくのだろうか?

ラジオではないが、音声コンテンツとしてラジオデイズがある。オリンパスの子会社ラジオカフェが運営するオンラインショップで、文芸作品の朗読、落語、講義などがある。いわば、オーディオブックなので、こちらの方が「買ってもいいかな」という気がする。

NHKは何をやっているんだろうと思うが、例えば、要望の多いであろう語学講座などは別売りCDという販路を確立しているために、却って、進出を困難にしている。(なお、国際放送で流している他言語ニュースはPodCastされている)

California Watchとは

調査報道を担うために設立されたNPOには、Spot.Usのような全米対象のネットワークから、「サンディアゴの声」のような個別都市対象のものまで、階層ができつつある。
California Watchは、調査報道教育のNPOCenter for Investigative Reportingが2009年夏に開始したプロジェクトで、新聞が壊滅状態のカリフォルニア州の教育、安全、健康、環境、行政の無駄、政治腐敗などを報道するジャーナリストの組織だ。現在13人。発足にあたって700人の記者が応募したというから、えり抜きの13人だ。
行政情報をデータベース化したり、SNSを活用したりして、市民自身によるWatchdog活動を支援する。記事は、地元の新聞、テレビ、ラジオなどに提供されるため、最初からマルチメディアコンテンツとして取材される。
財政的支援はナイト財団やヒューレット夫妻財団などから。

記者はベテラン揃い。LATimesを除くほとんどの新聞、ローカル放送局が提携したため、発足半年で存在感を確立した。写真家集団マグナムのような、記者集団ブランドになるかもしれない。

Chicago News CooperativeやProPublicaが失業したジャーナリストの集団という「供給側組織」だったことに比べ、California Watchが、地元報道をする企業が著しく衰退したことの対策という「需要側組織」であることも、このNPOを特殊なものにしている。

Newsonomics:California Watchに注目する3つの理由

Aggregationをめぐる法的思考2:メディア同士の対立

ボストングローブが運営するサイトBoston.comにとって、ボストングローブ紙のサイトはコンテンツの一部でしかない。そのBoston.comが、地区別の情報を集積するハイパーローカルサイト(your towm)を立ち上げた際、先行していたGateHouseMediaのWickedLocalから、見出しと最初の段落を使っていることに対して2008年12月に訴えられた。コンテンツ制作者がコンテンツ制作者を訴えるという特異な裁判だ。

訴えの核心は、1)見出しと第一パラグラフを使うことが著作権侵害にあたるか、あるいは、米法の認めるフェアユースに該当するかどうか、2)本文へのリンクを示すためにWickedLocalのロゴを使うことは(誤解を与えるという意味で)不正表示になるか、の2点。

ハーバードでネットと社会について研究する機関、バークマンセンターのCitizen Media Law Projectを率いるDavid Ardiaは、「見出しが本文へのteaserとして使われている場合、WichedLocalの読者はBoston.comへ導かれるが、もし、そうでない場合、とりわけ、見出しが発生事実を伝えてしまう場合はそれで終わり。だから、GateHouseはWickedHouseは見出しに要約できない解説や分析を行って差別化しなければならない。それは社会にとってはいいことだ」と言う。
これがフェアユースの理屈だが、もし、フェアユースの法理を使う場合、包括的な結論にはならず、「引用記事が本体の代替になっていないか」「引用部分が長過ぎないか」「GateHouseの収入に影響はないか」など個別事実を認定することになるという。この場合、WickedLocalとYour Townは狭い市場をめぐって争う関係であることが強く影響する。

David Ardia on the GateHouse Media v. New York Times Co. suit from Nieman Journalism Lab on Vimeo.


Nieman Journalism Lab : Ardia on GateHouse v. NYT Co.: What’s at stake in the linking case

この訴訟はすぐに和解に持ち込まれ、Globeが自動集積を行わないことで合意した。GlobeのYour Townにとって欠くべからざるリンクではないことと、Globe(経営するNew York Timesも)自身がアグリゲートされる危険があり、その法的根拠を作りたくなかったためのようだ。

Nieman Journalism Lab : Wrap-up: GateHouse/NYT Co. Q&A
Aggregationをめぐる法的思考1:フェアユース

日経電子版と国際版:隠れた市場実験

日経電子版の立ち上げについて、朝日新聞が書いている。
朝日:日経電子版「紙」との併存重視、価格は高めの慎重船出

編集局では専任デスクだけで30−40人を置き、サイトを運営するデジタル編成局と第2販売局、デジタル営業局の3局で100人超が担当している。
電子版への投資額は人件費を除き70億~80億円。コンピューターメーカーの協力を得ながら開発を進めたが、契約者が読んだ記事のデータを蓄積する顧客管理システムなどに費用がかかったという。

デスクの数、システム経費が多すぎる。失敗することはないと思うが、退却できない前進っていうのは経営判断としてはどうなのだろうか。

仮に紙の読者が電子版に切り替えた場合、販売所に日経から支払われていた配達手数料などがゼロになり、電子版の購読料がすべて本社の収入になる。このことが販売所側に伝えられると、日経を配達する他の全国紙系列の販売所などが「減収になる」と反発。約1カ月の無料利用期間を経て課金が始まる5月を前に、議論は平行線のままだ。

日経は販売店に委託している関係だからこそ電子版(クレジットカードによる直接販売)に踏み切れたのだが、系列販売店を抱える一般新聞には難しい。クリステンセンの「イノベーションの解法」に指摘されているように、既存製品のために最適化された「チャンネル」にも変化を強いるからだ。

日経電子版は、プリントに影響を与えないように価格を定めたが、実は別の(意図せざる?)市場実験もしている。月間購読料が約15000円する国際版だ。

その価格政策は、1)国際版購読者には無料閲覧、2)電子版のみは本社契約で4000円(3分の1)

これは、恐らく最もナイーブな「プリントーデジタル移行シナリオ」で、超忠実な読者、海外駐在員というITリテラシーの高い「エリート」が、「紙」というインターフェイスの価値をどう評価するか、はっきり分かる。
(もっとも、大半は経費で処理しているだろうから、少しばかり事情が違うだろう。本社契約だと現地決済できない企業もある)
いずれにしても、プリントの国際版は早晩維持できなくなるだろう。

豪オーストラリアン紙もiPad版準備中

オーストラリアン紙は、マードックが創刊したオースラリアの全国紙で14万部弱(国内最大)。小学校に通うために飛行機を使うような広大かつ人口希薄な土地なので、電子新聞に寄せる期待は並々ならぬものがある。

記事によると、オーストラリアでのiPad発売は4月末に遅れるが、5月には同紙のiPad版を立ち上げる、
副社長のNick Leederは「ウェブにあるバカ長い記事のリストとは違い、紙は文脈や相対的な価値付けをしている。iPadは編集的判断を表現するチャンスを与えてくれ、我々の製品にぴったりだ。まだ決まっていないが、かなりの確率で有料化する」という。マードックは、パソコン画面には敵対的だが、膝の上に抱えることができるタブレットには好意的で、「タブレットでだめなら、新聞は終わりだ」と話している。
News Corpの新聞も順次iPadに対応するらしい。

australian : With an app at the ready, The Australian awaits the iPad

清水美和「中国問題の核心」

2007年日本記者クラブ賞記者による中国本。前著「中国問題の内幕」(この本はお薦め)はどういうわけかチベット問題が完全に無視されており、出版直後にチベット問題が起きたので、異常さが際立った。
その続編なので、補足があるかと期待したのだが...

政局に取り憑かれて、「社内政治」と「政治」の違いさえ分からない政治記者がいるように、中国の党内権力闘争に取り憑かれているようだ。だから、チベットも民主化要求も雑音扱い。

話法が突然変わったり、主語に対応する述語がない文が目立ったり、担当編集者・永田士郎は何をやっているんだ。

耳折り箇所
  • 人民解放軍 共産党の軍で統帥権は党中央軍事委が掌握。国防省には大臣はいても時間がいないので、次官級協議には副総参謀長が出席

依田高典「行動経済学 感情に揺れる経済心理」

昔「経済心理学」といわれていた領域は、いまでは「行動経済学」と呼ばれている。米ダニエル・カールマンが基礎を築いた。
著者は京大院経済学部教授。合理的期待形成という、数学科崩れが夢中になった経済学が全盛だったころ、経済学が前提にする人間はそんなに合理的かどうかの研究を始めた。
伊東光晴教授の最後のゼミ生で、院生の根井雅弘(現教授)に相談し、西村周三研究室に行くという、蕩けるようなエピソードがあとがきに出てくる。

耳折り箇所
  • 利用可能性ヒューリスティック (availability heuristic) 思いつきやすいことを優先して評価する意思決定。人間は全文検索しないということ
  • リンダ問題 リンダというフェミニストの銀行員のイメージに引きずられる「偏見」「通念」。代表性ヒューリスティック (representative heuristic)
  • 係留ヒューリスティック がんの確率は1%。がん検査は患者の10%を見落とし、健康人の5%をがんと誤診する。もし、検査でがんと診断された場合、本当にがんの確率は....15.4%
  • 河野龍太郎 ヒューマンエラーの原因「人は見たい物を見る」
  • 確率の加法性の破綻 p.125
  • 利他性と互酬性 チスイコウモリ=吸った血をおすそ分けしないと、村八分にされるp.199

Politicoとは


Politicoは、2008年の米大統領選挙に狙いを定めて設立された政治専門サイト。
ニュースサイトのほかに、提携ネットワークテレビへのコンテンツ供給、ラジオ、ワシントン周辺で配布する無料新聞を運営している。
大統領選が花盛りのころのサイトトラフィックは月間1100万人。2009年夏の時点では月間670万人で、政治ニュースサイトとして定着、いまや、首都の政治家とその周辺、ロビイストなどの必見サイトになっている。

ウラ取りするより、未確認段階の一報を流して政治過程に影響を与えていることが強みになっている。記者会見の日程、その発言内容などが編集もされずに流れていく「政治部内部の記者メモ」のようなもので、内輪の語彙もそのまま使われている。670万人は一般の国民ではない。

サイトに掲載したニュースを印刷した新聞はワシントン周辺では無料で配布(配布場所はここ)、国内外にも郵送で送る(年間200ドル、国外は年間600ドル)。32000部。議会開会日は毎日、閉会時は毎週発行する。かくも政治中毒新聞なので、ロビイストや政治家秘書の求人広告が集まっているのは当然だ。

Yahooのほか、CBS NewsやABCローカル局、ラジオなどにも記事、ビデオ番組を提供している。大統領選の民主・共和両党の公開討論会のスポンサーになった。USA TodayにもPoliticoのカットとともにニュースを提供している。ワシントン支局を廃止した地方新聞にも記事を配信している。

ワシントンポスト紙政治部記者のJohn Harris(クリントン回顧録著著者)とJim VandeHeiが、地元テレビのオーナーRobert Allbritton(WashingtonPostのグラハム家と並ぶメディア一族)から出資を受けて、2007年1月にスタートした。「ジャーナリストはなぜ疑り深いか」のロジャー・サイモン、Times誌のマイク・アレンなど、BloombergやNPRの有名記者も参加し、「最初からプロ集団」だった。現在もJohn Harrisが編集局長をつとめている。
記者は100人以上、エンジニアなどバックオフィスに25人を雇っている。記者はビデオカメラを常時携帯。スクープ至上主義で締め切りがない激務だが、給与水準は「WashingtonPostやNewYorkTimesから転職するだけの意味がある」そうだ。

2009年11月に株式がAllbritton CommunicationsからAllbritton家の資産管理会社Perpetualに移った際、SECに報告された財務資料によると、2009年第3四半期までに売り上げ2000万ドル(20億円)でわずかながら黒字化を達成したようだ。売り上げの過半は3万部余りの新聞によるものだ。(オンラインの売り上げがいかに小さいか、よく分かる)
打倒ワシントンポスト(グラハム家)のAllbritton家は、政治情報以外のワシントン情報を扱うローカルサイトを検討しているらしいが、政治オタクというニッチな読者を相手にしたメディアにそれほど旨味があるとは思えない。

なお、この成功に刺激されたのか、AOLが著名紙の政治記者をスカウトして政治サイトPoliticsDailyを2009年に開始した。トラフィックでもいい勝負をしている。

【参考】
ジェット・ラグ:The Politicoの事業戦略
メディアパブ:新興新聞社Politico,創刊3年目で早くも黒字達成へ
New Republic:The Scoop Factory
New Republic:The Owner of 'Politico' Is Going After the 'Post.' Again.

東京見物:日航東京の素晴らしい眺望

小雨だったが、お台場の日航東京の眺望は素晴らしかった。
日航東京は、超高級ホテルが東京に進出する前、都内でも指折りのおしゃれなホテルだったが、今月は朝食付き16500円。お台場で催し物がなかったからだ。お台場の(人気という意味で)地盤沈下の影響かもしれない。

普通の家の育ちだから、ウエルカムドリンクがのどを通らなかったり、部屋のフルーツを初めて見たときにフロントに食べてもいいか電話した経験もあるくらいなので、新聞サービスと卵を焼いてくれる朝食が最低条件になってしまったことが怖い。

写真の合体にはHuginを使った。
みんなのIT活用術:Huginの使い方

東京見物:東京スカイツリーを見た


1年半ぶりに東京に遊びにいってきた。
東京スカイツリーは2008年7月着工、2011年12月完成予定で、24日には328メートルまで伸びていた。
最終的な高さは634メートルなので約半分。350メートルと450メートルにできる展望台は、この上に作られることになる。
東京タワーの「なにがなんでも世界一」という時代ではないので、五重塔の心柱制振や「そり」「むくり」を意識したデザインを売りにしている。中国広州タワーやシカゴタワーのように地震を全く考えていない建造物と同次元で勝負するわけにはいかない。
とはいえ、捻れた構造でこれだけ高いと、見上げるだけで不安を感じる。

設計は日建。東京タワー、神戸ポートタワー、福岡タワー、東京ドームなど特殊形状の構造計算をするノウハウがある。
施工はてっきり竹中工務店(東京タワーなどの特殊建築が得意)だと思っていたが、大林組が担当。名古屋の瀬戸デジタルタワー、福岡タワー、さっぽろテレビ塔を建てた実績がある。

鉄不足のなかで作られた東京タワーと違い、厚さ10センチの超硬度鋼管は日本の製鉄技術の粋だ。巨大建造物は自重が最も負担になるので、直径は2.3メートルもある。

頂上のクレーンは最終的には500メートルまで昇っていく。その上は江戸の鳶が活躍するのだろう。
読売:クレーン未知の高さへ



日経電子版の紙面画像の意味

たとえば、300万部の日経新聞。
記者1人のコスト(人件費や取材経費)が平均100万円だとする(現状ではもっとかかっているかもしれない)。1部あたりの負担は33銭になる。
記者とバックオフィスで合計3000人が必要とすれば、1部あたりのコストは1000円。つまり、300万部が瞬時に電子版に移行すれば、購読費は月間1000円で十分になるはずだ。なにせ、広告収入は含んでいないのだから。

部数50万部の地方新聞でも、1人当たり2円なのだから、500人までは養うことができる。

電子新聞の広告収入がどの程度になるかは分からない。新聞は第三種郵便の条件を満たすために広告面積に上限があったが、電子版にはそれがない。上限があったから値崩れしなかったかもしれないし、上限がないので買い物シーズンなどにすべての依頼を引き受けることができるかもしれない。

しかし、価格はコストだけで決まるわけではない。いわゆるコモディティ以外の製造業の人は熟知しているはずだ。

磯崎哲也:日経新聞電子版で考える「電子出版物の価値とは何か?」

現在「電子出版元年」フィーバーで、電子出版物についていろいろな試みが行われているが、消費者側にも供給者側にも「電子出版物は紙の出版物より安くて当たり前」という思い込みがあるように思えてならない。
もし流通コストで価格が決まるなら、新聞は金箔入り和紙を使って1部500円で売ろうとするはずだ。
経済学では参入が自由な完全競争市場では、超過利潤はゼロになるし、ネットでは多くの情報がタダで供給されている。
しかし、「だからネットでは価格は安くするしかない。」というのはアホの考える戦略だ。利益を最大化する私企業の正しい考え方は、「この出版物でしか得られないもので勝負する」ことであって、他者がタダで供給している情報と類似のものを供給していては、いくら安くしようが商売が成り立つわけがないのである。
そして、日経は特別な新聞だ。
価格を下げることによって需要がさらに増えるのであればともかく、増加が期待できないのでなければ、電子出版だからといってそこから大きく価格を下げる必要もないし、下げないのが正解なのである。
「1,000円で供給しても粗利は確保できる」という場合でも、である。
日経新聞に4000円払えない人は、そもそも、日経新聞を読まなくても困らない人だ。
中の人も外の人も全くそう思ってないかも知れないが、ネットの発達した現在における日経の価値は「記者」のアウトプットの価値というより、紙面のどこに何を配置するという「整理部」的な価値なのではないか。
これだけは日経新聞に限らない。
「公共圏の話題」という議題設定機能はパッケージングにあるからだ。Agenda settingという厳めしい言葉よりTopic settingぐらいの言葉でいい。ブログのようなシステムでは電子新聞に代わり得ず、日経がわざわざFlashで紙面を見せるのは、それがないと「今朝の1面に出ていたね」という言葉が失われてしまうからだ。

仏ルモンドが29日からオンライン強化 英タイムズが6月有料化

仏ルモンドが29日から、新聞に掲載した記事の無料掲載を徐々に廃止し、有料購読者だけにしか見れないようにする。
ルモンドは、プリント部門とオンライン部門が別々に運営されており、オンライン部門の担当するストレート記事は無料のまま。

LeMonde:"Le Monde" devient "une marque globale" sur le papier et le numérique

オンライン購読契約は月間6ユーロの通常契約と月間15ユーロのプレミア契約の2種類。通常契約はこれまで通り、すべての記事(アーカイブを含む)を閲覧できる。プレミア契約では、30日前までの電子版(PDF)やiPhone/iPad版でも閲覧できる。月間29.9ユーロ(最初の3月は19.9ユーロ)でプリント版+プレミア契約の「ルモンド完全セット」が始まる。
iPhoneアプリは現在の無料版の他に、有料版ができるようだ。

Eric Fottorino社長は
le journal de référence doit devenir une marque de référence et, de préférence, qui suscite l'attractivité. Les différents supports, papier et numérique, ne sont pas concurrents mais complémentaires : au papier, l'investigation de longue haleine et le décryptage ; au Web, le flux et le débat interactif ; à l'iPhone et autres smartphones, l'alerte et l'information rapide. Pour la première fois de son histoire, Le Monde se présente comme une marque globale
とコメント。参照の新聞、基準となる新聞(journal de référence)と自称できる新聞は世界を見渡しても、そうはない。



英ロンドンタイムズが5月から新サイトthetimes.co.ukとthesundaytimes.co.uk(日曜版)に移行、6月から有料化に踏み切ることを発表した。現在のtimesonline.co.ukは廃止。

Times:The Times and Sunday Times websites to charge from June

料金は1日1ポンド、1週間で2ポンド。プリント版の読者は無料。生活Q&A、ビデオ、インタラクティブグラフィックス、生討論、編集局との討論などを計画している。プリント版は1部1ポンド。

価格設定は小売りでは紙と同じ、長期契約では3分の1になり、プリント購読者には付録サービスになる価格政策だ。以前のような圧倒的な権威はなくなっているが、ロンドンタイムズのブランド力なら可能かもしれない。過当競争に自ら陥らないように気をつければ、価格は自分で決められる。

英国外からのアクセスは1日2ドル(1.34ポンド)、1週間4ドル(2.68ポンド)と割高に設定してあることだ。ちなみに、東京でOSC経由で読むと1部1200円程度する。

OpenOffice:プレーンなtable表のHTML書き出し

OpenOfficeのマクロはOpenOffice Basicのほかにも、PythonやJavascriptが使えるが、Windows時代にマスターしたエクセル(Excel)のVisual Basicが使いやすい。ただ、ファイルやオブジェクト操作などは全く同じというわけにはいかない。
以下は、選択した範囲をHTMLのTableにプレーンに書き出すマクロ。ただ、消さないようにというだけのメモ。

Sub Main

 Dim Sheet As Object
 Dim Selection As Object
 Dim Cell As Object   
 Dim FA      As Object
 Dim O       As Object
 Dim OS      As Object
  
 FA = createUnoService("com.sun.star.ucb.SimpleFileAccess") 
 O  = createUnoService("com.sun.star.io.TextOutputStream")
 OS = FA.openFileWrite("./table.html")
 O.setOutputStream(OS) 
 
 Sheet = ThisComponent.Sheets.getByName("Sheet1")
 Selection = ThisComponent.CurrentSelection
 Ranges = Selection.getRangeAddress 
 Dim row_start As Long
 Dim row_end As Long
 Dim col_start As Long
 Dim col_end As Long
 rowstart = Ranges.StartRow
 rowend = Ranges.EndRow
 colstart = Ranges.StartColumn
 colend = Ranges.EndColumn
 Dim i as Integer   ' helper var used as counter
 Dim j as Integer   ' helper var used as counter
 O.writeString("<table><tbody>")
 for i=rowstart to rowend
  O.writeString("<tr>")
  for j=colstart to colend
   O.writeString("<td>")
   O.writeString(Sheet.getCellByPosition(j,i).String)
   O.writeString("</td>")
  next j
  O.writeString("</tr>")
 next i
 O.writeString("</tbody></table>")
 O.closeOutput()
End Sub

英仏でロシア富豪が新聞買収 インディペンデントが身売り

英インディペンデント紙がロシアの富豪アレクサンドル・レベジェフ氏に1ポンドで身売りした。ああ、お前のだめだったかという英国左派の嘆きが聞こえる。

Guardian:Lebedev buys Independent newspapers
Times:Former KGB spy Alexander Lebedev buys Independent for £1

インディペンデントは1986年の創刊。マードックの英国進出に反発して、高い理想を掲げた新聞の創刊物語は、マイケル クロージャーの「創刊 インディペンデント紙の挑戦」で有名だ。優秀な記者を集め、斬新な紙面で一時は発行部数が40万部を超えたが、90年代に入ると購読者の減少などで経営が悪化した。とりわけ、労働党が政権を取って中道化したのに、立ち位置が左のままで、取り残されてしまった。昨年の損失は1240万ポンドで倒産直前の水準だった。

レベジェフ氏とその息子が買収会社Independent Print Limitedを設立し、1ドルで債務ごと引き受ける。インディペンデントは今後10か月、925万ポンドを支払い、運営費に充てる。持参金付きの結構な契約だ。
交渉中には「無駄使いするにはいい方法だ(This is a good way to waste money)」というふざけたコメントを出している。
元KBGスパイで、ロシアの銀行グループやアエロフロートを所有するレベジェフ氏は、昨年夕刊紙イブニング・スタンダード(株式の75%)を1ポンドでデイリーメールから買収したうえ、2009年5月に模様替え、当日は65万部を無料で配った。10月からはフリーペーパー化した。おかげで、マードックのフリーペーパーLondon Paper、デイリーメールのフリーペーパーLondon Liteが廃刊になった。
合併により、オフィスなどはインディペンデントと合体すると見られている。また、インディペンデント自体もフリーペーパー化するという噂もある。

買収にあたってレベジェフ氏が出したコメントは、片腹痛いので原文のまま。ただし、レベジェフ氏はロシアでは民主派と言われている。(金を持っていれば、普通はそうだろう)
I invest in institutions which contribute to democracy and transparency and, at the heart of that, are newspapers which report independently and campaign for the truth to be revealed. I am a supporter of in-depth investigative reporting and campaigns which promote transparency and seek to fight international corruption. These are things the Independent has always done well and will, I hope, continue to do.

一方、フランスの夕刊紙フランス・ソワールも2009年1月にロシアの大富豪セルゲイ・プガチェフ氏(親プーチン)に買収されている。
かつては、代表的な夕刊紙で100万部近い売り上げがあったが、売り上げが減少するにつれて、身売りを繰り返し、2006年にはデンマークで掲載されて大問題になったムハンマド中傷漫画を転載して、しょっぱい話題の的になった。最近は2万3000部でミニコミ紙状態だった。
経営を任された息子アレクサンダーは今月17日、記者を40人から100人に増やし、2000万ユーロの広告を打つなどして立て直しを開始した。目標は20万部。

WSJのiPad版は月18ドル、広告は固定料金

ウォールストリートジャーナルのiPad版は月17.99ドルになるとブルーブバーグが報道した。雑誌のEsquire誌はプリント版より2ドル安く(広告なし)、Men's Health誌は紙と同一価格にする方針。

オンライン版が週8.62ドルなので約半額、プリント版が月9.92ドルなので約1.9倍になる。
このWSJ iPad版にはすでに6社(オラクル、キャピタルワン、ビュイックなど)が広告契約を結んだ。4か月で1社40万ドル(4000万円)らしい。

一方、米富裕層向けクレジットカード会社のChase Spphire、トヨタ、ユニリバー、大韓航空などはニューヨークタイムズiPad版の広告枠を最初の60日分購入、運輸大手フェデックスもロイターとニューズウイークのアプリケーション版の最初の90日分を購入した。
こんな大量購入は、ある意味、部数が少ないiPad版だから可能にすぎず、また、開始直後はアップルがiPadの広告を集中投入するので、便乗できるという思惑もあるらしい。
また、当面は固定料金で、表示回数あたりとか、クリックあたりのように、出版社にとって変動する料金設定はとらない方針。また、どの程度広告効果があるのか、見当がつかないからだ。

NYT:Advertisers Show Interest in iPad
WSJ:Magazines Use the iPad as Their New Barker

原口大臣の「クロスメディアの禁止法制化」は結論が逆転

米連邦裁判所巡回裁判所は24日、同一地域の新聞とテレビ局の所有することを禁止するFCCのクロスオーナーシップ規制を一時的に解除する裁定を下したらしい。
共和党議員のMichael Powellらが規制緩和を求めていることに対して、メディアの多様性を求める市民グループ(Media Access ProjectやFree Press)から緩和反対、メディア業界から緩和不足だと訴えられたらしい。(アメリカではそんな抽象的な提訴ができるのか?)両側からの主張に困り果てた巡回裁判所は、FCCに規制を見直すよう求めた。
しかしながら、NAAのJohn Sturm理事長は「このご時世に規制緩和しても、だれが新聞やテレビを買収するのだろう」と疑問を呈している。

一方、日本では、原口総務大臣のクロスオーナーシップ見直しを反映して、5日に通信・放送法体系改正案を閣議決定した。
 改正案では、基幹放送について、無線局の免許取得と放送業務の認定の二つの手続きを分離する制度を加えるだけにとどめ、ハードソフト分離を断念した。
 有料放送については、認可制を届け出制に緩和する。(CATVは約款届け出は不要にする)
 いわゆる番組調和原則の適用を受ける基幹放送事業者には、番組の種別の公表を義務付けた。放送事業者は、番組をそれぞれ「教養」「報道」「娯楽」などの区分に分けなければならなくなる。「ためしてガッてん」は何になるのだろうか。
 マスメディア集中排除原則は、放送法に盛り込んだうえで緩和。一定の範囲内(10分の1から3分の1)であれば、他局の株式を保有することを可能にする。現在のマスメディア集中排除原則の規定(放送対象地域が重複する場合は10%以下、重複しない場合は20%未満)よりも、他局の株式をより多く所有できるようにする。株式保有率の上限は総務省令で定めるらしい(またかよ!)。

驚くべきなのは、原口総務大臣の発言が「テレビ局やラジオ局の経営が厳しくなって、地方の報道や言論の拠点としての役割を果たせなくなることがあってはならない」と変わったことだ。
参考:原口総務相が「クロスメディアの禁止法制化」を明言

アメリカのFCCと同様、1960年代の豊かさゆえに可能だった多様性という贅沢は、21世紀には許されなくなるだろう。多様性が維持できなくなったとき、次善の策は公的管理だが、ジャーナリズムの公的管理なんて、木に竹を接ぐような話だ。

米新聞広告が1963年の水準に縮小

全米新聞協会(NAA)が発表した2009年新聞広告調査によると、プリントとオンラインの両部門合計の広告費は、前年比100億ドル(約1兆円)減少した。前年比27.2%減で「4兆円市場」だったものが「3兆円市場」さえに満たなくなった。
下落率では大恐慌以来の水準で、ピークの2005年からたった5年間で44%も減少した。絶対額でも1986年の水準だ。
名目ではなく、物価デフレーターで修正した実質値でみると、1963年水準で、このときから2009年までにアメリカのGDPは14倍になっている
頼みのオンライン部門でも12%減ったというのは、業界内でも勝ち組と負け組が分かれてきたことを表している。クラシファイドは2000年の3分の1に、小売りも3分の2に縮小した。
全国
小売り
クラシファイド
プリント
オンライン
合計
暦年
mill
変化
mill
変化
mill
変化
mill
変化
mill
変化
mill
変化
2000
$7,653
14%
$21,409
2%
$19,608
5%
$48,670
5%
2001
$7,004
-9%
$20,679
-3%
$16,622
-15%
$44,305
-9%
2002
$7,210
3%
$20,994
2%
$15,898
-4%
$44,102
-1%
2003
$7,797
8%
$21,341
2%
$15,801
-1%
$44,939
2%
$1,216
$46,156
2004
$8,083
4%
$22,012
3%
$16,608
5%
$46,703
4%
$1,541
27%
$48,244
5%
2005
$7,910
-2%
$22,187
1%
$17,312
4%
$47,408
2%
$2,027
32%
$49,435
3%
2006
$7,505
-5%
$22,121
0%
$16,986
-2%
$46,611
-2%
$2,664
31%
$49,275
0%
2007
$7,005
-7%
$21,018
-5%
$14,186
-17%
$42,209
-9%
$3,166
19%
$45,375
-8%
2008
$5,996
-14%
$18,769
-11%
$9,975
-30%
$34,740
-18%
$3,109
-2%
$37,848
-17%
2009
$4,424
-26%
$14,218
-24%
$6,179
-38%
$24,821
-29%
$2,743
-12%
$27,564
-27%

名目と実質の違いは、CRJがグラフにしている。赤い方が実質値。今年も20%程度は減少しそうなので、来年には1950年ごろの水準になる。
CRJ trend

有料化の最前線:ロンドンタイムズが今週有料化プレビュー、米ABCも検討、英FTが未登録者ブロック

  • 英タイムズが今週有料化プレビューを開始
    英タイムズが今週、購読者を対象に、新しいプラットフォームの内覧を開始する。内部メモでは「トラフィックに囚われてもペイしない(An obsession with traffic just doesn't pay)」という。タイムズは、ノルウェーのニュース収集サイトMeltwaterのブロックを開始した。
  • 米ABCが6月に有料化
    ABCがコンテンツの一部について6月に有料化を計画。ニュース部門(ABC News)は1400人いるスタッフの20%を削減する計画で、すでに希望退職を募っている。同部門でのリストラは2008年3月、9月、2009年1月に続く4回目。一方で、朝のニュース番組Good Morning Americaと夜のWorld Newsに続いて、昼のニュース番組も始める計画している。人員削減だけでなく、取材と編集を一人でできる人材の募集を開始した。ENG(Electronic News Gathering)からDNG(Digital News Gathering)へ転換を図る
  • 英フィナンシャルタイムズが未登録者をブロック
    同紙は19日から未登録者のアクセスをブロックした。登録ユーザーは月間10本まで無料。
    担当者のRob Grimshawは「クレジットカードでも、デビットカードでも、携帯でも、アマゾンでも、PayPalでも、グーグル経由でも支払い可能にしたい」と言う。
    グーグルが進める「First-Clock-Free」を経由すると月間5本まで。ただし、メディアパブによると、裏技は有効のまま。
    詳しくはメディアパブ:英ファイナンシャルタイムズのサイト,未登録者には一切ニュース記事を読ませない

政治報道のマルチメディア:米医療保険改革法案をどう伝えたか



クリックすると全体表示
オバマ政権が最重要課題に掲げる医療保険制度改革の採決があった(C-Spanで全員1分間演説の生中継を堪能した)。「大きな政府」に対する拒否感は民主党議員にも強く、お決まりの中絶問題も絡んで、431票の過半数をめぐる議会工作(交渉や脅しとそのための票読み)がのるかそるかの剣が峰、最近のアメリカ政治ニュースの注目の的だった。

Capitol Hillのお膝元、ワシントンポストは技量と根性を見せている。首都の新聞はこうでないといけない。
  • 議会中継(議会テレビと同じ映像、独自配信)
  • 院内総務の会見など会見映像
  • ブログ「44」(議員の態度表明を刻々更新、会見一問一答、)
  • 票読み集計ページ(刻々更新、右写真はスナップショット)
  • 医療保険改革ページ(インフォグラフィックス多数)
  • 政治記者がテーマを設定した読者投稿欄、ネット投票
印象的なのは、不謹慎な表現を使えば「今日の見所」とでもいえそうな編集・展開で、どんな数字が意味を持つのか、誰が態度未定でどんな思惑があるのか、誰が動いているのかなどを詳説している。アマチュア政界スズメにはたまらないだろう。
票読み集計ページには、全議員の態度(賛否)だけでなく、保険業界から幾ら献金を受けているか、選挙区の保険カバー率はどの程度かが調べられている。
大切なのは、マルチメディア展開はチームを作ればできるという訳ではないことだ。例えば、以下のグラフィックスは新聞に使用した非インタラクティブな画像だが、とても見やすく、Data-richである。
WP:Cost of Buying Coverage in an Insurance Exchange
記者はグラフィックスに無知で、デザイナーはそれ以上にニュースに無知という日本では、この水準のマルチメディアは遥かに遠い。

一方、ニューヨークタイムズも表現の洗練度では負けていない。

クリックすると全体表示
特筆すべきなのは、トピック別読者投稿が以下のように公開されていることだ。YouTubeのようにブログに貼付けることができる。双方向といっても、コメントを無限に流すなんて無粋なことはしない。

いまや、Politico(政治報道のベンチャー)は絶対に外せないし、ある意味で最も注目を集めている。
  • 議会中継(議会テレビと同じ映像、独自配信)
  • Live Pulse 速報系ブログ、記者が共用するチッカーのようなもの
  • Politico 44の黒板(whiteboard) 「投票後大統領が記者会見」のようなスケジュールなどが載る=写真
  • 議会前デモなどのビデオ取材
筋肉質でスパルタンな経営をしているので、マルチメディアをやる人員はいないのかもしれない。


ちなみに、オバマ大統領の議決直後のつぶやき。



日本でデータベース駆動の選挙情報を扱うのは、東大先端研の菅原琢特任准教授がJanJanと構築した「国会議員白書」ぐらいだった。
菅原ゼミ:「国会議員白書」開設にあたって
ところが、よりによってJanJanが2010年3月末で閉鎖してしまう。JanJanには「政治資金データベース」や全国選挙データなど、政治情報をかなりの手間とお金を投じて収集するサイトがあった。「白書」は菅原教授が引き取るようだが、どうして、新聞社が買い取らないのか。

アメリカは、大手メディアだけでなく、さまざまな選挙データサイトがある。たとえば、electoral-vote.comは、データとブログスタイルのニュースでシンプルに成り立っている個人サイトだが、普段は月間数十万PV、大統領選挙の年の11月には1億近いPVを集める。
日米の差が著しいのは、メディアだけではない。個人レベルでも、大学レベルでも、お話しにならないほどの違いがある。

飯島渉「感染症の中国史」




19世紀末以降の中国、台湾、香港で頻発したパンデミックと、その対策としての近代化、植民地開発の歴史を扱う。(日本自身を含め)水道整備がコレラ対策として始まったことや、ペストや日本住血吸虫病の研究が「植民地医学」として発達したことなど、別の日中交流史を知ることができる。「疫病と世界史」の日本史版。
1894年、香港でペストが「ペストである」と初めて確認された。1905年前後には、日本でもペストで毎年100−300人が死んでいる。コッホのコレラ菌発見は1884年。アジアで大流行した1916年には日本でも7000人以上が死んだ。マラリア発見は1880年、日本住血吸虫の発見は1904年。
1975年にエリザベス女王が初来日したとき、日本側がホテルから従業員までなにもかも消毒した話は有名だが、なるほどと納得する。

耳折り箇所
  • 香港最長の幹線道路、青山道(Castle Peak Road)は、香港で献身的にペスト治療にあたった青山胤通(たねみち、帝大教授)が名前の由来
  • 日本が治外法権を回収したとき、検疫権も回復した
  • 日清戦争の日本軍人死者の8割は台湾、その9割がコレラと赤痢
  • 水路のコンクリート護岸は、日本住血吸虫の宿主宮入貝を除くため(小宮義孝)
  • 1950年代の中国で、日本住血吸虫病の感染者は3000万人

ところで、オセロの中島知子(黒)は「日本で最後に天然痘を罹患した人」だそうだが、本当なのだろうか?

岡田功「メジャーリーグなぜ儲かる」



私のハーバード時代の友人で(ここまですべてが嘘)、毎日新聞経済部の岡田功編集委員が、大リーグ選手の高額契約金を可能にする経営・マーケティングを調べ、「メジャーリーグなぜ儲かる」を書いた。
フルブライト留学生として滞在したハーバードの地元、ボストン・レッドソックスを中心に、MLBの会計資料などを使って、スポーツビジネスの仕組みを分析している。

球団・MLBが始めたチケット再流通システム(シーズンチケットを持つ人・企業が行けない日の切符を別の人に売却する制度)の話などには感心した。他方、四大プロスポーツで唯一独禁法の適用除外を受けていることが市場価値の源泉であるという指摘に、日本もさぞやと、想像をたくましくした。

最も知りたかったのは、MLBが経営するウエブサイト、mlb.comだ。ピーク時で一日600万PV、2007年にすでに4億5000万ドルの収入があった(MLB収入の7%)。すべての球団が出資して設立した運営会社は、全球団に専属記者を貼り付け、記事や写真を掲載する。試合そのものといっていいほど一挙手一投足をデータ化して、分析に供している。2002年から有料ネット放送(年間80ドル)を始め、テレビ放映権と衝突しない試合の生中継と、全試合のアーカイブを高画質配信している。ケーブルテレビ局MLB Networkの運営も始めた。
現在、ブルームバーグと開発したデータ分析ソフトを30ドルで販売、データで野球を語る「セイバーメトリクス」も可能にしている。


MLB自身がソフトを配信するビジネスに乗り出したことについて、Nieman Labが、スポーツジャーナリズムの重大な問題を指摘している。ヤンキースのアレックス・ロドリゲスのドーピング疑惑が持ち上がった際、MLB Networkがいわば「身内」の不祥事について、手加減のない報道をしたとして賞賛されたからだ。問題とは、要するに「中抜き」と「権利ビジネス」である。
  • スポーツジャーナリズムの対象が、メディアよりもファンに直接語りかけることができるようになった。バスケットのシャキル・オニールは、トレードされた際のコメントをほとんどツイッターで行った
  • MLBは、新聞社のウェブサイトが掲載できる音声・映像を一日120秒以内に制限した。(NFLは90秒)
権利の問題があるから、APのビデオニュースには、試合写真はスライドとして使われいるが、動画は全く現れない。ハリーポッターの新聞のように、スポーツ欄の写真が動画として動き出すという「未来の新聞」は、この権利問題を解決しない限り、誕生しない。



興行としてのスポーツが成功すると、「報道の自由」の問題が背後に退き、「知的所有権や肖像権」の問題になる。この件についてMLBなどと交渉してきたオーランド・センチネル紙のJohn Cherwau氏は、「表現の自由では、他人の家、つまり、練習場に入るために招待か契約が必要という事態から、我々を守れない」と言う。

MLBはどこまでもビジネス化を試み、携帯電話に試合途中のデータを速報するサービスの差し止めを求めたこともある。これは、データは「事実そのもの」であり、表現の自由で保護されるとして、棄却されている。
しかし、2004年には、PGA(ゴルフ)自身が運営するリアルタイムデータを配信する権利について、PGAのライセンス販売権が認められた。以後、主催社には、データコントロール権が認められるようになった。
2007年には、NFLが施設内での記者会見、現場リポートなどの音声・ビデオ取材について一日45秒に制限する条件をつけた。新聞業界の反発は当然で、2009年には90秒に拡大された。
大きなビジネスになっている大学スポーツでも、全米大学体育協会(NCAA)が2007年に大学選手権の現場ブログを書いていたLouisville Courier-Journal紙のBrian Bennett記者を出入り禁止にした。ESPNに販売した中継放映権を守るためだ。
ウィスコンシン州では、地元新聞が高校生の試合をストリーム配信したことについて、同州体育協会が「メンバー高校で行われたすべての試合について、放送・ネット配信・写真撮影・音声取材・文字・絵など、いかなる表現に対しても権利を持つ」と裁判に訴えた。信じがたいことだが、新聞に掲載した試合写真のプリント販売など(コストからして読者サービスにすぎないが)、「報道の自由」ではカバーできない領域を突いており、同州新聞協会はガイドラインを制定した。

日本でも、サッカーの中田英寿を嚆矢とするインタビュー有料化が、マネージメント会社主体に始まっている。テレビで流れる大物選手のインタビューの裏では、大抵、「お車代」とは桁違いの大金が動いている。
また、ゴルフやフィギュアなど、テレビ中継がある場合、競合するテレビ局はニュース番組で結果を伝えることを控えている。自分が中継するときもあるから、業界ルールが成り立つ。しかし、新聞社やYahooはネットでどうすべきなのか。Yahooは今年からパリーグの有料配信を始めたが、ネット配信権はどの程度排他性を持つものなのだろうか。
また、プロスポーツ選手が、ジャニーズ並みの権利コントロールを行うことが本当にいいのか(もちろん、権利としてできる)、落としどころを探る必要がある。
(この点、沢尻エリカの件は注目したい)

iPadのアプリ受付開始 立ち上げに間に合う締め切りは27日

TechCrunchによると、アップルはiPad用アプリケーションの受付開始を案内するメールを開発者に送った。4月3日の発売と同時に利用可能になるには、27日までにアプリケーションをアップロードし、アップル社の検証を受ける。同日発表の注目度は格別だから、提出が多くなることは避けられず、アップルは「候補」になるとしか案内していない。

多くの開発者はiPadの実物なしで開発しているが、守秘義務契約を結んだ会社には実物が貸し出されている。BusinessWeekによると、カーテンを閉め切った単独の部屋で、鎖で持ち出せないようにしたiPadを使っているらしい。アップルが、写真が漏れても特定できるような対策をとっているためだ。
Evernoteでさえ、実機提供を断られた。開発そのものはエミュレーターで可能だが、タッチパネルの感度やボタンの位置など、実物がないと微調整できないことも多く、大手でも同日発売を諦めている開発者が多いという。
Apple Swears iPad Partners to Secrecy

【世代効果3】新聞離れの原因

30年ほど前、生命保険会社が主婦に得意料理を聞いたところ、20−30代は酢豚、40代はカレー、50代は野菜炒めだった。料理経験が最も長いはずの50代が「野菜炒め」だったのは、結婚前後、戦争直後の物資難と重なったためだ。40代のカレーも30代の酢豚も、当時の家庭料理の流行が反映しているにすぎないが、その効果は持続する。
世代効果とは、正確には「世代無視効果」で、若い頃に原因のある現象について、年々歳々、次の世代が累積的に生まれてくるために、全体としては原因との相関が見失われてしまうことだ。原因と結果が時間的に離れすぎて、別の要因がノイズとして入り込みすぎる。

私のハーバード時代の恩師である(ここまですべて嘘)ロバート・パットナムは、アメリカの共同体が衰退した原因を探ったベストセラー「孤独なボーリング(Bowling Alone=一人でボーリング)」で、教会参加、PTA活動、地域ボランティア、ボーリング大会やブリッジクラブ、労働組合、友人宅訪問、新聞への投稿回数などを指標に使い、共同体が1960年ころから連続的に衰退していく様子を説明した。地域のボーリングクラブに参加する人が次第に少なくなり(高齢化して引退するから)、ついには一人でボーリングをするようになったのだ。

新聞の購読率もこれに含まれている。

アメリカの新聞の売り上げは2000年ごろまで増え続けた。その後、急激に縮小したため、原因はインターネットということになっている。
しかし、新聞の衰退はすでに1960年ごろから始まっていた。世帯あたりの購読部数は早くも1960年代に減少を始めた。しかし、ベビーブームなどの人口増加がそれを上回り、総発行部数は増加を続けた。その影響も1980年代には力つきる(人口増加の原因が非英語話者に変わったから)。この頃、最初の新聞再編(JOAなどによる競合紙の準合併)が行われる。
不幸なことに、クリントン政権以降、景気が回復すると、広告収入が伸びたため、一時的に息を吹き返すどころか、さらに肥大化してしまう。(株式公開などで経営がリスク志向になったため)

原因が遠い昔にあることは、世代別購読率に現れている。Figure-6は「昨日新聞を読んだか」を聞いた調査で、1930年代生まれは60%前後なのに、1970年代生まれは20%そこそこにすぎない。
新聞の衰退は、60%の世代が死に、20%の世代に代わっているためだ。そして、丙午(1966年)生まれの人が少ないことを変えられないのと同じように、いまさら、何もできない。(学校でのメディア教育NIEに効果があったとしても、現れるのは30年後だ)

グラフを見ると、1940−1960年代生まれになると約20%低下し、1960年-1980年代になると更に20%低下している。
パットナムの本で最もシビれるのはここからで、統計的にテレビの登場が原因の50%を説明するという。統計で50%説明するというのは完璧に主因といっていい水準だ。
なぜ、そんなことが分かるのか。
広いアメリカには、衛星放送が始まるまでテレビが来なかった地域があるからだ。その地域は、収入や産業構造の影響を取り除いても、共同体活動が衰退していないのだ。そして、衛星放送が入ると見事に衰退した。
テレビが登場したとき、「電気新聞」として新聞界は恐怖に震えた。新聞業界はその後も栄えたので、それは笑い話になっていた。現実に起きたことは、テレビが(とりわけ個室に)侵入してきた結果、地元の共同体に対する関心が著しく衰退した「引きこもり」が早くも起こり、一般事象に関する一般的関心、新聞が前提としている読者が激減してしまったのだ。

最近のネット普及でメディア移民が起きているのは確かだ。しかし、これは新しいメディアが普及したというだけの話だ。新聞が無料で大量のニュースを流しているから、それで十分だと思うのも当然で、新聞の自業自得だ。(無料で公開して儲からないというのは、気違いじみている)。これは80歳の人にも当てはまる合理的選択だ。

最大の問題は「公的領域のジャーナリズム」に対する、若い読者の支えが著しく細っていることにある。そもそも、公的事象に関心がないなら、広告モデルだろうが、有料化しようが、マルチメディア化しようが、ソーシャルメディア化しようがメディアを支える読者にはならない。

22日のNHKの討論番組「激震 マスメディア」で、ドワンゴの川上量生会長が「約200万人が別の国に住んでいるのだ」と言ったことは、テーマを最も的確に指摘していたと思う。(最も驚いたのは、外務省会見の中継で「彼は衆議院と参議院の区別もつかないのに、”行かされ”ているんですよ」という関西弁だった)

この200万人はどのような人々か。
ここからは想像。
パットナムの本の帯に引用されているのは、大リーグ版野村監督、ヨギ・ベラの言葉(Yogiism)の一つで、「誰かの葬式に行かないのなら、自分の葬式に誰も来てくれないだろう」というものだ。大抵の葬式はこの世のしがらみだ。このしがらみがない人々の典型は、慶応SFCの教授だった関口一郎が指摘しているように、帰国子女である。彼らには共同体がないから、例えば、新聞の訃報には終世関心がないだろう(大学の先生くらいは思い出すだろうが)。
間違いなくネットが心地いい人々で、テクノロジーに多分詳しい。その詳しさは、そのように詳しくさせる内的必要があったためかもしれないし(専門的でなければ心を支えられない)、通念通り、ネット中毒の結果かもしれない。専門性に対する執着は強いから、専門的になることを極力自制してきたマスメディアの論理は全く分からない。

この200万人にとって、新聞もテレビも「興味の持てない情報」にすぎない。「無編集で流せばよい」「オンデマンドで流してほしい」という要望に続く言葉は、「まあ、俺は興味ないけどね」だろう。家庭とか、育児とか、近所付き合いとかのイメージが全く結びつかない。そういう人々はマスメディアにとって「別の国」に住む人々だ。


参考データ:日本の世代別新聞広告接触率(アメリカに比べれば全然レベルが違う)
【世代効果1】赤い羽根共同募金の将来
【世代効果2】肺がんの罹患率

書評
「孤独なボーリング」

【世代効果2】肺がんの罹患率

肺がんの年代別罹患率は、当然ながら、年齢とともに高くなる。長生きすれば、タバコを吸う本数も累積的に増えるし、そもそも、がんというロシアンルーレットを日々弄んでいるのだから、長生きすればいつかは暴発する。
国立がんセンターでは、その年代別罹患率について、出生コホート効果(世代効果)を実データを使って説明している。

国立がんセンター:出生コホート効果について(肝臓がんと肺がんの例)

要するに、年代別罹患率を生まれた年ごとに再集計してグラフに書くと、右のようになる。上に向かって段々になっているのは、年齢とともに高くなる罹患率を示している。
注目すべき現象は、1940年前後の帯の部分に現れている。1940年前後に生まれた世代は、タバコを吸いはじめる年頃が戦後の物不足時代に重なっているため、喫煙率が低い。これが、罹患率の落ち込みとなっている。
同じ1940年前後の生まれでも、年齢が高まるにつれて落ち込みが目立たなくなっているのは、次第に喫煙率が高まっていったことの反映だろうか。

人口10万人あたりの肺がん死亡率の推移を見ると、最近50年間、一貫して上昇していることが分かる。
胃がんの死亡率は急激に減っている。治る病気になったためだ。では、肺がん死亡率の上昇は、何を意味しているか。

死亡率の上昇の決定的な要因は、人口の高齢化と、他の病気の死亡率の低下である。他の病気で死ななかったから、生きながらえて最後に肺がんになる人が増えただけだ。国立がんセンターはちゃんと年齢効果を統計的に相殺して、右のようなデータがあるにも関わらず、「男性の肺がん死は減少している」と明言している。(女性は増えている)

世代効果とは、その名に反して、正確には「世代無視効果」というべきで、若い頃に原因のある現象について、年々歳々、次の世代が累積的に生まれてくるために、全体としては原因との相関が見失われてしまうことだ。
そして、これこそが、新聞のネット対策が遅れた理由だ。

統計数理研究所、中村先生によるコーホート分析入門
難しいのは、世代のためか、年齢のためか、区別がつかないことだそうだ。

【世代効果1】赤い羽根共同募金の将来

赤い羽共同募金は、社会福祉法に基づき、毎年10-12月に行われる公的募金活動であり、終戦直後の1947年に始まった。その募金総額は昭和40年代から急激に増加し、平成6年前後にピークを迎え、以後、減少を続けている。
減少期間は、国内の景気低迷が続いた「失われた10年」に重なる。とはいえ、不況時こそ必要なものが募金だ。その減少は不景気の影響なのだろうか?


失われた10年といっても、平成6年から平成19年まで実質GDPは80兆円程度増加している。また、名目GDPは500兆円強でほとんど変わっていない。データの上では不景気説には根拠がない。そもそも、オイルショックがあった昭和50年前後に、共同募金は爆発的に増加している。


明らかに、昭和40年代、「赤い羽根共同募金」は組織化され、周知され、それに呼応する「募金する人々」が誕生した。だとすれば、平成以降の募金額の減少は、「募金する人々」が減少していることを示すかもしれない。

約30年かけて起こる波動は、大抵、「世代」が影響している。もし、「募金する世代」というものがあるとすれば、それは昭和40年以降成人し、現在引退(労働者としても、生命としても)しつつある「団塊の世代」にほかならない。

問題は、次の世代「団塊ジュニア」が「募金する世代」であるかどうかだ。平成以降の減少を見ると、その可能性はかなり低い。その傍証として、自治会による戸別募金が強制的だとして、わずか数百円のために、裁判に持ち込む例も現れている。
その次の世代は、「募金しない世代」の子供で、不況と超個人主義の時代に育っている。赤い羽根共同募金の将来は暗いと考えざるをえないと思う。

民業圧迫批判でBBCがリストラ デジタル部門が将来構想

BBCが、民間メディアを圧迫しているという批判に応えて、ラジオ2局の閉鎖やオンラインサイトの半減などで、スタッフを25%削減するリストラを計画している。広告放送であるBBC World Newsなども人員削減の対象になる。
受信料収入で運営され肥大化しすぎたという批判が受信料制度廃止に繋がりかねないからで、1億1200万ポンドの予算を25%削減し、BBCサイトのニュースには外部サイトへのリンクを貼り(すでに実行している)、地域ニュースは控えるという共存を図る。
BBCがiPhone用アプリを発表したときに、英国新聞発行人協会が強烈に反発するなど、英国メディア界では、無料サイト派のガーディアンを除き、BBCへの反発が強まっている。

そのBBCで、未来メディア技術部門(Future Media and Technology)の責任者、エリック・ハガーズがガーディアン主催のChanging Media Summit 2010で講演し、BBC改革について語った。

未来メディア技術部門は4部門からなる。
  • Future Media:iPlayer(BBCの番組をネットや携帯で見るサービス)や携帯アプリ、BBC Red Button(地デジのデータ連動のような機能)などデジタルコンテンツ部門
  • Broadcast and Enterprise Technology:放送インフラ部門
  • R&D:カラー化やステレオ、衛星中継などを開発した名門
  • Information and Archives:資料部
2014年にはインターネットは大人になる。普及率はテレビやラジオに匹敵し、第三のプラットフォームになる。現在週間2800万人のユーザーがいる。上の世代にとってネットは情報源だが、若い世代にとってネットはテレビやラジオと同じ娯楽であり、この若い世代は大人になってもネットから離れることはない。
ネット機器が居間に普及し、将来、(テレビやラジオがネットに包括されて)ネットが、BBCにとって唯一のプラットフォームになるかもしれない。
これからのBBC Onlineは、BBCの制作するコンテンツの統一した窓口になる。その戦略は、これまで放送の補助としてのオンライン部門から、単一の一貫性のある統合体に変わる。その基準は、どの程度公的利益にかなうか、どの程度編集の優先順位に合致するか、どの程度、広く、質高く、価値があるかどうかである。

BBC Onlineは受信契約者にとって契約価値の中心になっている。1994年にPC用ニュースサイト、2000年に携帯用サイトを開始した。現在、次世代のネット接続テレビが登場しようとしている。
BBCはスマートフォン向けにニュースアプリケーションを4月に発表します。続いて、ワールドカップを意識したスポーツアプリケーションを発表する。
テレビに関しては、規格が乱立している。いまのところ、我々はiPlayerがバージンメディアTV、任天堂Wii、ソニーPS3で再生できるようにした。Freesat HD boxやSamsungとSonyのテレビにも対応する予定だ。
BBC Onlineはlinear(放送)でもあり、On demandでもあり、ソーシャルでもあり、パーソナルでもある。ネットの相互性によって、BBCのコンテンツはWebに編み込まれ、発見やリコメンデーションによって、コンテンツが社会のWebの一部になる。

アメリカの新聞に起きたことを避ける方法 2

「アメリカの新聞に起きたことを避ける方法1」の続き

経営者はコミュニケーション技術を使った経験を生かして、報道と収入を製品に向けるようなソーシャルネットワークを築くべきだ


Jeff Jarvisは「ネットワークのように考えろ」と言っている。その意味は、すべてを内製するのではなく、読者やクライアント、提携先を協力することを考えるべきだということだ。
読者にニュースを「クラウドソーシング」するTip line(取材依頼電話)のWeb2.0版を理解すべきだ。この取材提案はオンラインデータベースにリアルタイムで掲載され、記者も読者も閲覧できる。そこまでのシステムを作れなくても、目撃者のリポートを記事に利用することができる。
  • 地元の有力ブロガーと知り合え 1記事あたりのアクセス数があなたのニュースサイトより多いブロガーは知っておかなければならない。どんな下らないサイトでもあなたの地元で起きていることは追わなければならない
  • 取材範囲が重なるブロガー、ネットニュースサイトを把握しろ 記者なら当然チェックしているはずだが、編集者も発行人もそのリストを持て。LATimesは地元スポーツ(ドジャースなど)や映画(ハリウッド)をカバーしているブロガーを雇って、相互にリンクを張っている
  • 地元で1000人以上のフォロワーを持つTwitterアカウントを把握しろ
  • 最も有力なFacebookユーザーを探り出せ 地元大学の数学の先生に協力を求めよ(グラフ理論のこと)
ブロガーに接近するのはなぜか。ネット上では参入が容易で、広告が既存新聞から流れ出している。しかし、新聞が広告を売る立場だったら話は違う。
グーグルが敵であるのは、ニュースを奪っているからではない。広告を独占的に扱っているからだ。新聞社に広告部門があるなら、そこが広告を売るべきだ。新聞社は、製品を地域コミュニテーのnexus(連結点)になるように再構成せよ。


Newspaper Nextが強調した「地域の情報収集道具」になるべきだというアイデアだ。もっとも、これが成功するのは地方紙・専門紙だけかもしれない。

プロも間違える英語:damagesは損害賠償、damageが被害

AfterDeadlineの英語の直しには、高校英語級のものと、新聞表記上のものが混在している。語彙の問題は全然分からなかった。

【最難関の部類】
How he [Iraq's prime minister] wins — or perhaps more significantly, how he loses — will more than anything else determine the country’s course in the coming years as President Obama carries out his promise to withdraw all American troops.

“…or perhaps what is more significant, how he loses…”の省略なので、significantという形容詞になる。

【語彙の問題】
At another building nearby, however, the damages were considered too severe and the city told residents to stay out.

高校生の問題。damagesは損害賠償、damageが被害。

In three decades of public life, including two prior statewide races, he [Andrew M. Cuomo] has grappled with how to present himself, and how much to change: whether to be more humble, or less contentious; how to calibrate his legendary aggressiveness to suit a shifting political climate; when to leap to the attack and when to lay low.

高校生の問題。lieは自動詞、layは他動詞。

But in raising the possibility of a return sooner rather than later, Woods also treaded on his Tour colleagues merely with the timing of his reappearance, before the third round of a match play tournament in Arizona, sponsored by Accenture — a company that dropped Woods as its spokesman in the wake of his sensational fall from grace.

高校生の問題。tread>trod>trodden:踏む、歩く

The court order ends a seven-month saga that began in August when the judge rejected the S.E.C.’s first settlement, which would have forced the bank to pay $33 million in penalties and included only a slim statement of facts in the case.

sagaは偉大な歴史物語。大げさすぎて陳腐。

Yet they constitute a huge national health burden, and suspicions are growing that one culprit may be chemicals in the environment. … Concern about toxins in the environment used to be a fringe view. But alarm has moved into the medical mainstream. Toxicologists, endocrinologists and oncologists seem to be the most concerned.

toxinは自然の毒。

They, along with angry ranks of scientists, historians and veterans, are denouncing the book and calling Mr. Fuoco an imposter.

NYTimesはimpostor(詐称者)の誤りを1年間で12回もしたそうだ。

[Caption] Maricel Presilla, above, a cookbook author, chef and scholar of Latino food and cooking, has her culinary fiefdom in Hoboken, N.J.

fiefだけで土地を意味する。

This is the home of Mrs. Wilberforce (Katie Johnson), a little old lady of sweet but stubborn disposition who lives alone with her three parrots until deciding to take in a border.

boarderは下宿人(boarding schoolだから)。

【スタイルブックを見て解決する表記の問題】
Mr. Agbokou said his cousin immigrated to the United States from Togo in 1993 and worked as a yellow cab driver.

タクシー運転手はcabdriver、しかし、黄色のタクシーの運転手ならyellow-cab driver

In a written opinion released Monday morning, Judge Rakoff declared that the evidence showed that the bank failed to adequately disclose the bonuses and the losses, but he said it was unclear if the lack of disclosure resulted from negligence or ill-intent.

ill intentはハイフンにしない。

デザインは新聞を救えるか

記録のための資料:昨年来日したときに書きそびれたジャチェック・ウツコの講演ビデオ(ビデオはもっと来日前のもの)。view subtitleで日本語を選ぶことができる。

東欧の新聞デザインを改革してSNDなどで賞を総なめ、部数も倍増した。彼が関わったのは小規模な新聞だが、英国ではGuardianを筆頭に紙面デザインはデザイナーが担当している。紙面改革というのは編集局長が新しいデザイナーをつれてくることだ。整理部なんて全く不要であることが分かるだろう。 (未来の中核は当然、ユーザーユーザーインターフェースを担当する部門になる)

NYT電子有料部門にオーナーの甥

米WSJなどによると、ニューヨークタイムズのオーナー、アーサー・ザルツバーガーの甥、デビッド・パーピッチ(David Perpich、32歳)が、タイムズの電子版有料部門担当役員に採用される。
デビッド氏はザルツバーガー家が1896年にオーナーになって以来、第5世代にあたり、ハーバードMBAで、これまで技術系コンサルタント会社 Booz Allen Hamiltonに勤めていた。
New York Observerによると、一族の同世代中「最も聡明な跡継ぎのうちの一人」で、学生時代にはAbout.comでインターンをした。
オーナーの息子グレッグ・ザルツバーガーは、父親と同様に、現在はオレゴニアンで記者をしているが、電子化有料化の重大な決断をする時期に記者上がりでは難しいかもしれない。

BusinessInsider:Arthur Sulzberger Jr.'s Nephew David Perpich Joins New York Times To Prepare For Paywall
New York Observer:Meet the Young Heirs to The Times

新聞の電子版は「イノベーションのジレンマ」である典型で、あまりに強固な既存ビジネスがあるために新規部門が傍流になってしまう社内政治力学が働く。
ソニーがiPodを作れなかったのは、社員が愚かであったためでなく、会社が何で儲けているか、熟知してたからだ。iPodのようなものを提案しようものなら、「お前の耳は腐っている」「海賊版を認める気か」「ソニーレコードはどうなる」と罵倒されただろう。
ジレンマは克服できないからジレンマなので、解決手段などないのだが、「どうせ既存部門が破壊されるなら、身内に破壊されたい」と考えることができるのは株主のみだ。(既存部門の社員にはその余裕はない)
新規部門に全力を挙げるためには、失敗の可能性が高いにも関わらず、「こちらこそ本流である」というメッセージを打ち出さなければならない。それができるのは、オーナー家だけである。この点、自己株式所有という特殊な支配形態が多い日本の新聞には難しいかもしれない。

新聞の未来を楽観するFT電子版

日経BPで編集長だった川嶋諭氏が設立したオンライン経済誌「JBPress」に、FT.comのロブ・グリムショー氏のインタビューが載っている。JBPressはシステム開発を請け負っている会社でもあり、ほとんど唯一の成功例であるFTの楽観的な話を真に受けてはいけないが、印象強い発言が多く、偉い人に読ませてやる必要がある。

日本ビジネスプレス:新聞の電子化、課金で攻めるFTに不況なし

FT電子部門は赤字ではない。月間7000万ページビューならが、有料購読者が12万人超いて、無料読者も登録読者なので、広告単価が高い。登録読者の閲覧記事を追跡しているので、購読案内などのアプローチも適切にできる。(まあ、貧乏人は見ないしね)

ロブ氏は、1日パスが新聞販売の半分を占める店頭売りのデジタル版であることを明らかにしている。
記事にお金を払ってもいいと思う人は多いけれども、年間の購読契約はしたくないという人が当然います。これは新聞と同じです。
マイクロ課金は5月頃に始めるつもりです。当初のやり方はシンプルで、「1日パス」を発行します。
新聞を時折買う人がいるように、1日パスにもかなりの需要があるのではないかと思っています。

値段は紙と同じ。当たり前だが、媒体が何で、それにどのような費用がかかるかどうかは、(競争がない限り)価格には関係ない。新聞を金箔入り和紙に印刷しても、1万円で買う人はいない
我々は基本的に、オンラインであってもコンテンツには紙と同じ価値があると考えていて、それを証明したいと思っています。

とはいえ、日経が4000円に値する電子版を作るには、以下のような取り組みは必須だろう。

今でも月間180本のビデオコンテンツを制作しています――、双方向のグラフィックやより詳細な説明も加えられる。ブログやSNSを通じて、読者が編集部に近づけるような機能も備えています。
今後も新サービスを開発する余地が大きいことを考えると、ええ、確かにオンラインの購読料の方が高くなる日が訪れても全く不思議はありませんね。

もっとも印象的なのは、BBCに対する考え方だ。

公共放送というのは、かなり制約を受けます。BBCはバイアスがかかっているような報道はできないし、はっきり意見を述べることもできない。必然的に、報道内容は起きたことの分析や批評ではなく、ファクツに限定されてきます。であれば、民間の報道機関には商機があると思うんです。批評、論評を知りたいし、特定の編集観点を通して世界を見たい。世界がどうなっているのかという強いオピニオンが知りたい。

無料モデルについて、以下の記事が面白い。もし、無料でしか見てもらえないような価値のないものなら、ニュースサイトなどやめて、他の仕事をしたほうがいい、という指摘は素晴らしい。無料では、市場が供給してくれる貴重な情報が、少しどころか、まったく完全に失われてしまう。

日本ビジネスプレス:新聞のオンライン課金

デジタル化していく上で、印刷輸送部分だけでなく、編集部内でも「本質的ではない仕事」である整理部は不要になる。一方で、プログラミングジャーナリストとでもいうべき、マルチメディア編集部が「本質的な仕事」になっていくだろう。
彼らは、事件発生4時間でデータベース駆動サイトを立ち上げたり、ビル倒壊事故後数時間で3Dモデルによる立体現場地図を作ったり、飛行機墜落後数時間で航跡データを解析して3Dアニメを作ったりする人々だ。動画編集などを除くと、日本にはいまだに存在しない職種だ。FTの2倍以上である4000円の課金をする日経は、このようなチームを作らなければならない。

ネットオークションでテレビ局が売りに出される。現在55万ドル

ミシガン州のUHF局、WMKG-LPが、ネットオークションのeBayに売りに出されている。不動産と設備、免許込みの完全なテレビ局だ。
eBay:UHF TELEVISION STATION THIS IS A BROADCAST TV STATION
最初は70万ドル(6300万円)で始まったが、現在は55万ドル(5000万円)まで値下げされた。オーナーのBud Kelly氏は「もう引退したいから」といい、現金なら50万ドルでもOKと言っているらしい。
現在は黒字。低出力のアナログ放送のみで、ケーブルテレビで再送信されていない弱小局(零細ぶりはHPを見れば分かる)。デジタル対応するには10万ドルの送信機が必要らしい。アメリカの地方局では珍しいことではなくなっているが、ニュース部門は最近の不況で廃止した。免許込みといっても、FCC(連邦通信委員会)の認可は必要だ。

アメリカのテレビ局も新聞に似て、大多数は零細で、個人オーナーの局も多い。系列支配が強い日本では、Yahooオークションでテレビ局が売りに出されることはないだろう。

Huluからバイアコムが番組引き上げ

バイアコムが、番組The Daily Show with Jon StewartThe Colbert Reportなどを動画サイトHulu(日本からは見れない)から引き上げた。クレイジーでいかにもアメリカという番組で、Huluの人気上位だったが、独自サイト(日本でも見られる)があるうえ、ケーブルテレビや衛星テレビへの番組販売に悪影響があるためだ。
Huluでの放映について、番組側は広告収入の5-7割を受け取るのが通例だが、バイアコムは前金で買い取るよう求めたようだ。

HuluはNBCとニュース社によって設立され、2009年にABC(ディズニー)が参加した(3社矢各27%所有)。YouTubeに対抗して、高い画質で長時間番組をCM付きで無料配信する。テレビ局が参加しているので、放送直後から配信される。月間4400万人、昨年12月には10億本が再生された。

無料配信が日本で成立しない理由は、日本にプロのブロガーがいないのと同じ理由だ。ネット広告の単価が低すぎて、配信コストを賄いきれないからだ。

日経トレンディ:米国で急成長中の「Hulu」上陸!?日本でテレビ番組の無料配信が進まない理由
メディア・パブ:動画サイトHulu、マネタイジングではYouTubeをしのぐ勢い

有料化の最前線:英FTがPayPalで1日パス、1週間パスを導入へ

英ファイナンシャルタイムズは、eBayのネット決済システムPayPalを採用し、1日券と1週間券の閲覧プランを導入する計画だ。
現在は
  • 未登録  30日で1本
  • 登録   30日で10本、ニュースレター
  • 標準会員 WEB版無制限(週2.15米ドル)
  • プレミア モバイル、ePaper、会社情報無制限(週3.49ドル)
で月極と年間契約だけがオプションだが、これに1日、1週間のオプションが加わることになる。

FT.comは2009年の有料購読者が12万6000人、750社に成長し、売り上げが前年比43%増えた。副社長のBen Hughesの発言は明快で「プリント版が有料なのに、どうしてオンライン版が無料である理由がない」

天声人語を書いていた深代惇郎がイギリスに留学したとき、「部数は言わないことにしている」と書いている。欧米で100万部を超える新聞はタブロイドに決まっているから、誤解されてしまう。だから、FTの12万6000人というのは過小評価すべきではない。
電子新聞を計画するとき、この程度で十分な利益が出ないような高価なシステムは作るべきではない。その点が日経電子版について疑問な点だ。

有料化の最前線:NYT、メーター方式は"early 2011"

ブルームバーグがニューヨークで10日、11日にメディアサミット2010を開いた。
ニューヨークタイムズの社主ザルツバーガー氏による基調演説によると、
  • 歴史は繰り返す 1850年代、ニューヨークヘラルドの編集者が「新聞は死ぬ」と書いた。電信が現れたからだ。
  • タイムズセレクト 検索機能とコラムの有料化は上手くいっていた。ただ、当時はオンライン広告がブームだったから無料化した。メータ方式への移行は正しいと信じているが、10年後はどうなるか、誰も分からない。
  • タブレット KindleもiPadもどのような広告が載りうるのか分からない。メディアがどのようなコンテンツを開発できるか試行錯誤しているように、広告会社も研究している。(Flashのなかったような)数年前のサイトを思い出してほしい
  • メーター方式 ”early 2011”と一言。
参照:メディアサミットのパンフレット(Flashによる電子冊子)

社主と女性CEO、ジャネット・ロビンソンは、2月のpaidContent2010にも出席した。メーター方式がトラフィックを減らすことがないのかどうかが関心の的。無料モデルの英ガーディアンを「敬意は表するが、それはビジネスモデルではないじゃないか」という指摘で会場は盛り上がった。こんなランチに出席したいものだ。

ピンク・フロイド、アルバムのバラ売り拒否でEMIに勝訴

ピンク・フロイドがレコード会社EMIと11年前に結んだ契約について、イギリス高等法院が「アルバムとは、一体として意図された順序で再生されるもの」という判断をし、アルバムの各曲を個別にダウンロード販売することをEMIに禁じた。
裁判はEMIの要請で秘密会として開かれ、EMIは「アルバムとは物理的なものに限られる」と主張していた。

英国では、音楽の98%がデジタルで、シングルの売り上げはアルバムの10倍。しかし、シングルの伸びは10%程度であるのに対して、アルバムは20%ある成長市場。
iTuneはiTunesLPという歌詞カード付きアルバム販売をしているが、個別曲を買うことも許している。
例えば、Dark Side of the Moonは日本では1500円、10曲のうち、9曲は150円でバラ売り、1曲は「アルバムのみ」と表示され、買うことができない。判決に従うと、10曲すべてが「アルバムのみ」になるはずだが、不遜なAppleが従うのかな?

アメリカの新聞銘柄数と部数の推移1945-2008

出典:NAA paid circulation
暦年朝刊夕刊合計朝刊部数(×1000)夕刊部数(×1000)合計部数(×1000)
194533014191749192402914448384
194633414291763205463038250928
194732814411769207623091151673
194832814531781210823120352285
194932914511780210053184152846
195032214501772212663256353829
195131914541773212233279554018
195232714591786211603279153951
195332714581785214123306054472
195431714481765217053336755072
195531614541760221833396456147
195631414541761224923461057102
195730914531755231713463557805
195830714561751231613425857418
195930614551755235473475358300
196031214591763240293485358882
196131214581761240943516759261
196231814511760245633528659849
196331114531754234593544658905
196432314521763243653604860412
196532014441751241073625160358
196632414441754248063659261397
196732714381749252823627961561
196832814431752258383669762535
196933314431758258123624862060
197033414291748259343617462108
197133914251749261163611562231
197233714411761260783643262510
197334314511774265243662363147
197434014491768261453573261877
197533914361756254903516560655
197634614351762258583511960977
197735214351753267423475361495
197835514191756276573433361990
197938214051763285753364862223
198038713881745294143278762202
198140813521730305523087861431
198243413101711331742931362487
198344612841701338422880262645
198445812571688356832765763340
198548212201676363622640562766
198649911881657374412506162502
198751111661645391242370262826
198852911411642404532224262695
198953011251626407592189062649
199055910841611413112101762328
199157110421586414701921760687
19925969961570423881777760164
19936239541556430941671859812
19946359351548433821592459305
19956568911533443101388358193
19966868461520447851219856983
19977058161509454341129056728
19987217811489456431053956182
1999736760148345997998255979
2000766727148046772900055773
2001776704146846821875655578
2002777692145746617856855186
2003787680145646930825555185
2004814653145746887773854626
2005817645145246122722253345
2006833614143745441688852329
2007867565142244548619450742
2008872546140842757584048597

ウェブデザインを考え直そう

委員長が紹介していたウェブデザイナー、長谷川恭久氏のサイトを見て、なんというか、プロってすごいと感動した。
ウェブのコンサルタントなので、産業そのものの問題をあつかっているわけではないのだが、「見る」価値がある。
(特にMacで見ると)抜群に美しい。読みやすい。

海外のサイトでは、LATimesが読みやすいし、色調が全く違い、テレビ局サイトのようなNewsdayもいいと思う(テキストを読むにはつらいかも)


手堅さでは、ドイツ系が素晴らしい。


ツアイト紙

フランクフルター・アルゲマイネ紙

しかし、色や装飾などのと違い、外国の完全コピーでは上手くいかないことがある。日本語特有の表記体系だ。
日本語の表記は、アルファベットではないので活字が小さくできない一方、中国のように漢字だけではないので、少ない文字数では情報量を詰め込めない。1バイトで表せる仮名文字と2バイトの情報量を持つ漢字が同じスペースを必要とするからだ。(中国語のサイトは見出しが数文字ということもある)
もし有料化になったとき、今のように広告が1コラムあるお陰で行が短く収まっているという「解決策」も使えなくなるかもしれない。
一覧性と読みやすさを共存させ、しかも新聞らしい「たっぷり感」(ニュースが全然新鮮じゃありませんという雰囲気はマズい)を表現するには、やっぱり外部のデザイナーに頼るしかないのかなあ。

NHKが22日「激震 マスメディア テレビ・新聞の未来」

NHKが3月22日夜、放送記念日特集「激震 マスメディア ~テレビ・新聞の未来~」という生討論番組を放映するらしい。

いわく「インターネットの爆発的普及。インターネットがメディアの構造を大きく変化させているのである。テレビ局や新聞社は、携帯電話などあらゆる端末に番組や記事を配信しようとするなど、ネットとの融合を図ることで生き残りを模索している。そうした中、これまでマスメディアが主に担ってきた「公共性」や「ジャーナリズム」の役割や在り方も大きく変わろうとしている」と管理人と同じ問題意識である。

問題は参加者。これでは、問題は全然明らかにならない。せめて湯川氏とか、JANJANの竹内氏とか、現場の人がいないと話にならない。河内氏でもいいかも。
  • 日本新聞協会会長   内山斉
  • 日本民間放送連盟会長 広瀬道貞 
  • ドワンゴ会長     川上量生 
  • ITジャーナリスト  佐々木俊尚
  • 学習院大学教授    遠藤薫  
  • NHK副会長     今井義典 
内山会長は読売社長、wikipediaによると「制作局を担当していた当時、印刷拠点の分散化を経営トップに進言して功績が認められる」とある。当時は名建議だったが、その成功体験で話されるとマズい。民放代表の広瀬会長も元朝日専務。
佐々木氏は元毎日警視庁担当。英文毎日の変態記事事件のときには反毎日側に立ち、双方が、毎日新聞持ち前の、唯我独尊、横柄なやり取りで楽しませてくれた。見事なくらい同じDNAだったと思う。
ちなみに「2011年 新聞・テレビ消滅」をなるほどと思う新聞社の人間がいるとは思えない。

感想を含む関連記事:【世代効果3】新聞離れの原因

アメリカの新聞に起きたことを避ける方法1

アメリカでデータ活用報道を指導しているRobert Nilesがオンライン・ジャーナリズム・レビューで「アメリカの新聞に起きたことを避ける方法」という記事を書いている。シンガポールで講演したことがきっかけになったものだ。俺の記事を引用して、上司を説得しろという趣旨で書いている。
How to avoid what's happened to American newspapers: Part one

経営部門は死にものぐるいでテクノロジーを活用しろ


どんな新聞経営者も紙に愛着があるはずで、デジタル時代に相応しいコンテンツを作れないのは仕方がない。でも、もし、デジタル時代の経営者になりたいなら、秘書やアシスタントを廃止し、現場に出て、読者に直接会え。これはメールではだめだ。
すぐやること:
  • 社員全員にスマートフォンを与えろ(副作用として、デスクが街に飛び出すことができる)
  • 社内連絡は携帯メールを強制しろ(電話するよりメールを先にするというルール)
  • 遠距離連絡にはSkypeを強制しろ(電話代が激減して驚くはずだ)
  • 記者も管理職も経営者もtwitterとfacebookを強制しろ。使い方が分からない? まずやってみろ!
  • 実験は大事だが、だめになったらやめろ。(組織的に取り組んで、引き際が分からないようなことは最悪)
  • 社長も編集局長も記者もブログしろ
編集局長などの管理職は、ブログのコメントに丁寧に答えろ。読者が「編集局長が直接答えてる」と思われなければならない。「編集局長のまわりのコミュニティー」を作らなければならない。

管理人としては、スマートフォンではなくiPhoneに限定したい。どうして世間がタブレットに注目しているか、分かると思う。(1年半前、iPod touchを買わなかったら、いま電子新聞なんて興味を持っていないだろう=仮定法の英作文みたい)
というより、現時点でiPhoneやMixiやBlogをやっていない人は、そもそも能力的に管理職には向いていないと思う。

逆説的だが、紙を守るうえでも、徹底的にデジタルを活用するしかない。

中国人が全員同時にテレビ電話できるルーター

インターネットでデータを転送する要の装置ルーターを製造するシスコ社が9日、最新ルーターCisco CRS-3を発表した。
最大伝送速度の322Tbpsは、「米議会図書館の全蔵書を1秒強」「これまで作られたすべての映画を4分以内」で転送でき、「子供を含むすべての中国の住民が同時にテレビ電話できる」能力がある。



猛烈に技術革新が進むネットの世界では、数年前に技術的に、あるいは経済的に不可能だったことが可能になる。5年前、これほど動画が普及するとは想像しなかった(そもそもフラッシュの普及はYouTubeがもたらしたものだ)。
だから、数年前に「夢物語だ」と否定されたアイデアを再検討する意味が十分ある。

同時に、ネット広告単価の低下(なお、5年間は続くといわれる)など、数年前の見通しが狂ってくることもある。いけると踏んだアイデアでも、絶えず再検討しなければならない。

Gothamistとニューヨークタイムズの不和

ニューヨーク特化ブログ「Gothamist」から、ニューヨークタイムズの1面を使った壁紙画像(NYTによる広告)が除かれた。

2月、創業者のJake Dobkinが、「ニューヨークタイムズの都内版と競争していることについてどう思う」と聞かれたことに関して立腹し、facebookで「毎年数百万ドルの損失を出して、メキシコの富豪から途方もない借金をしている新聞と”競争”しているだと? 立派な製品を作り、金を稼いでから、おめでたいこと言え。まだ、その前半分もできていないじゃないか」と書き込んだ。
続けて、Cityroom(都内版ブログ)について、「ひどく怠惰で、眠い、Gothamistのパクリ」で「5年前に格安で買えたのに、内製することを選び、結局20−40代では我々に完敗しているじゃないか」とこき下ろした。

この「無礼」に「報復」したというのが、広告引き上げの解釈だが、ちょっと話が単純すぎる。そもそも、バナー広告は引き上げていない。
この話はネットメディアと伝統メディアの間にある、どうしようもない「仕事の基準の違い」がある。噂でも、一方的な感想でも、イキのいい話題を早く集め、訂正や取り消しも同じくらい軽々と行う仕事が、どうしても従来メディアにはできない。訓練される過程で「素人じゃないぞ」と言われるのが、まさにそういうやり方で、最初からフリーでやってきた記者に感じる危うさそのものだからだ。(例外の方が多いくらいなので、あまりにステレオタイプな見方だが)

Dobkin氏は、タイムズを「オリジナリティと伝統的報道にとらわれて、最も大切な役割である、毎日、この街で何が大事かを伝える収集者(curator)である役割を失った。我々の世代にとって、彼らは何もしていない」

Gothamistは編集者5人で、ニューヨークに関わるブログを紹介したり、多少のオリジナル記事を毎日約50本提供するブログサイトで、2003年に始まった。同じコンセプトで他都市にも「---ist」というサイトを拡大している。
Tokyoistも一応準備中のようだ。

「一億総白痴化」誕生の経緯

一億総白痴化の言葉が誕生したきっかけとされる「何でもやりまショー」について、北村充史「テレビは日本人をバカにしたか」に詳しい経緯が書かれている。
1956年11月3日、野球の早慶戦のプレイボールの前後、早大応援席で慶応の三色旗を持った若い男が「フレーフレー慶応」と三度連呼し、観客につまみ出された。
夜7時半から始まった日本テレビ「何でもやりまショー」で、この様子が放映され、課題を成功したとして賞金5000円を受け取った。
翌日、六大学野球連盟が「学生スポーツを冒涜した」という声明を出し、早慶戦第二戦の中継を拒否、ビデオテープのない時代だったので「しばらくお待ちください」というテロップが流れた。

司会の三國一朗は、一般視聴者の挑戦者として参加した男はテレビ俳優加茂嘉久で、番組が「やらせ」だったことを告白している。
番組はGHQのCIE(民間情報教育局)の日本人メンバー、五味正夫(カムカム英語の制作者)、高橋太一郎(神戸放送=ラジオ関西で電リクを始めた人)、高橋啓らが発想した。オリジナルは米CBS「Beat the clock」という番組。ディレクターは松本尚彦で慶応出身。だから、早稲田ではなく、慶応の応援をさせたのだ。

本では、「白痴化」という言葉が、大宅壮一が週刊東京に書く以前から使っていたこと、テレビが急速に普及するにつれて、新聞や映画が極めて敵対的に扱ってきたことを検証している。

各章には素晴らしい引用がある。

「いつでも新しい環境が現れると、それは堕落であり、極悪非道のものであると非難され、それまで堕落であり極悪非道とされていた古い環境のほうが芸術になるのである」=マクルーハン、1960

「テレビが低俗なのは、人間が低俗だからではない。人間の興味や関心が多種多様ななかで、性的なものや猥雑なものへの興味だけが広く共通しているにすぎない」=ジョージ・ギルダー、1990





Ustreamの脅威、あるいはLivestream

Ustreamは、2007年3月に公開された生動画配信サービス。YouTubeが「あなたがTube(ブラウン管)する」であるように、「あなたがstream(生配信)する」という意味だ。大統領選挙でオバマとヒラリーが利用したことで利用者が増え、2010年2月2日に日本のソフトバンクが7500万ドル(75億円、55億円はオプション)を出資し、アジアへ事業展開しはじめた。ABCとNBCはゴールデングローブ賞などの生中継に利用した。Foxなどはラジオスタジオの固定カメラを使ってラジオ放送を流しているし、飼い犬をひたすら流している人もいる。

軍人の創業者が、イラクに派遣された友人が本国の家族や知人と一度に通信できるようにテレビのように動画を同時受信できるシステムを作ったことに始まる。
基本的には広告ベースで、利用は無料だが、顧客のバナーを使った有料サービス(1時間あたり1人1ドル以下)もある。YouTubeと同様、膨大な帯域を使う動画サービスが無料なのは、贅沢に資本を注ぎ込んでいるからだ。(早晩、Googleなどに買収されないと息切れしてしまうだろう。YouTubeのライバルveohが倒産したように)

Livestream(元Mogulus)も同様のサービスを行う。2007年設立で、2008年4月には米新聞大手ガネット社が専用チャンネルを開設、2008年7月に10億円を出資した。
ガネット社のインディアナポリス・スター紙は米大統領選の報道で利用、イギリスの保守党大会やダボスの世界経済会議などにも採用された。2009年10月にはFooFightersがネット上でライブコンサートを開き、全世界で15万人が閲覧した。AP通信はアカデミー賞の中継に利用した。
justin.tvも同様のベンチャーだが、利用者の自殺生中継などの問題が置きたり、著作権問題を抱えている。

生中継だけでなく、アーカイブ配信(replay)も当然ある。

New York Timesはチリ地震の発生直後、チリのテレビを生中継するUstreamのリンクをトップ記事の最後にアイコン付きで掲載した。管理人が見たときは1万人前後が見ていた(よくぞ捌いた!)。

Ustreamと高速無線回線があれば、これまでテレビ局が現場中継するために使っていたマイクロ回線、中継機、配信ネットワークに相当する機能を個人で無料で利用できる。
同社は2009年12月10日にUstream Live BroadcasterというiPhone用アプリを公開。記者会見やイベントをiPhoneのカメラと専用アプリを使って無編集中継する「だだ漏れ」が出来るようになった。(これに関しても記者クラブが抵抗している)
例えば、「趣味ジャーナリスト」による中継:福島みずほ大臣会見を生中継したよ!

日本でだだ漏れを人口に膾炙させたのは、ベンチャー企業ソラノートの広報、佐藤綾香の活動で、「ケツダンポトフ」というサイトで記者会見などを生中継したり、座談会を企画して放送したりしている。
アスキーの紹介記事(必見)を見ると、現在のデジタル機器でどれほど軽量な現場中継ができるか分かる。その気になれば、いまの新聞社は、総選挙ですべての選挙事務所から現場中継が無料でできるようになったのだ!

このブログも同様の注目をしている。

新聞労組が記者クラブ開放宣言

新聞労連が3月5日、記者会見の全面開放宣言を出した。経営者の組織である新聞協会にも提言する予定だ。

宣言では、「読者離れや新聞不信が根深くなっている」「閉鎖的・排他的であるとの批判に長くさらされてきた記者クラブの改革を率先して進め、まずは記者会見の全面開放に向けて努力する」と明言している。
記者クラブに関しても、原則オープンにして、かつ、幹事業務についても配慮すること、協定などの談合、オープンスペースの拡大や経費分担などを提言している。

記者の組合たるもの、こうでなくてはならない。

記者会見に参加できても、的確な質問ができるまでには時間がかかる。蛮勇を奮って質問をして白い目で見下げられるという経験はだれにもあるはずだ。「不勉強だ」という政治家や役人の発言は報じられないだけで結構多い。だから、記者クラブには、人事異動のある記者側が集団として同一性を保つ機能があった。

クラブの開放にはっきり反対しているのは、中央官庁ではほとんど読売新聞だけだ。
会見がオープンになり、ネットで生中継されるようになると、記者会見情報の希少性はなくなるかもしれないが、それほど怖れる必要はないと思う。情報はコウモリに似て、明るいところに出てこない。記者の仕事も大して変わらないだろう。

Twitterとは

Twitterは、参加者が一つの共有掲示板(データベース)に最大140文字のメッセージを書き込むことができるサービスで、アメリカのベンチャー企業によって2006年7月に始まった。決してミニブログではない。

140文字は携帯電話のSMS(ショートメール)の上限文字数。Twitterという名前は、会議で携帯電話がtwitchする(ぴくりと動く)という言葉を思いつき、その周辺を辞書で探してtwitter(鳥がさえずる、しゃべりまくる、くすくす笑う)という言葉を見つけたことから決まったそうだ。(英語版wikipediaによる)

従来の掲示板と違う点は、すべての書き込みの筆者が記録されているので、閲覧者と関係がある人、あるいは、閲覧者が関心を抱く人の書き込みだけをソート(選別)して表示できることだ。また、キーワードを含む書き込みだけをソートして表示することもできる。

膨大な数の参加者が同じ掲示板に書き込むのだから、ソートしない状態(Public Timelineという)で見る人はほとんどいない。
関係・関心のある人を登録することをフォローするといい、何人でも登録できる。Twitterに接続すると、大抵この登録した人の書き込みだけに絞り込まれた掲示板が表示される。これによって、その人のもっとも新しい書き込みを見ることができる。
一方、キーワード検索では、特にハッシュタグと呼ばれる、#で始まるテーマをつけることで、現在話題になっていることや関心分野についてソートに引っかかるようにし、不特定多数の、同じ関心を持つ人々の書き込みを見ることができる。

要するにソート機能付き共通掲示板にすぎないのだが、利用する人が拡大するにつれて、使い方が発明されていった。データベースの制約から短いメッセージに制限したことが、かえって気軽な用法を生み出した。
一つは、twitter専用のアプリケーションがiPhoneなどに登場したため、どこでも、どんな下らないことでも書き込みができるようになった。「駅に着いた」とか「液晶テレビを買いにいく」という書き込みが、「それなら○○へ行くべき」「ソニーの●●がいいよ」というリアルタイムなやり取りが生まれた。
フリーのジャーナリストや国会議員が、会議やシンポジウムの様子をリアルタイムで書き込むようになったことで既存メディアの中抜きが起こるという議論が始まり、また、企業の広報課や有名人が直接書き込むことで新しい広告手段になりつつあるという動きが出てきた。
retweet(再つぶやき)という、自分が共感したつぶやきを自分のつぶやきとして再投稿する機能が使われるようになると、「友達の友達」の連鎖で伝達能力を持つようになる。
リアルタイム性が特徴なので、テレビやラジオが生放送と同時平行で使って反応をくみ上げたり、生中継されている事件について話しあう掲示板としても使われる。また、ブロガーが、自分のページの更新を知らせる広告として、所かまわず書き込んでいる。

twitterの利用者は全世界で1億人を超え、日本人では約500万人程度だと思われる。もう無視なんか出来るはずがない。

2月27日のチリ地震による津波警報で、原口総務大臣が津波情報を直接発信したことに対して、読売新聞(のロートル記者)が噛み付き、ネット上で批判された。読売はtwitterを早い段階で紹介したメディアなのに、不幸としかいいようがない。

新聞の3割ルールと合成の誤謬

 新聞記事を完全にネットに公開するアメリカの新聞と異なり、日本の新聞は、本数で3割しか公開しない、いわゆる「3割ルール」を維持している。
(ただし、産經新聞はウェブファーストだし、新聞掲載から時差を持たせて選択的に公開している会社もある)

 この3割ルールには問題がある。
 1社に限れば3割だけの公開だが、どの3割を公開するかを各社独立に決めると、2社で51%、3社で64%、4社で76%、10社で97%が公開されてしまう。
 加えて、地方の新聞社が共同通信に気兼ねなく公開できるのは、その地域の記事しかないので、意図せざる分業が起りがちで、すべてを集約するGoogle Newsから見ると、図ったようなニュース構成になる。

 日本の新聞が、アメリカとの比較で「全面公開しなかったのは賢明だった」という偉い人が多い。一社一社の判断としてはそうかもしれないが、多くの会社が同じ方針を採用するとネット上では意味がなくなるという「合成の誤謬」に陥ってしまう。

 無料公開には別の現象も起きうる。
 日経のように、一部の会社が有料サイトを作ったとする。プリント版(新聞紙)では、読者の財布をめぐって競争紙との争奪戦を余儀なくされるが、他のニュースサイトが無料ならば、常に不戦勝になる。
 競争紙が無料ならば、読者の利便を増すためにリンクを張って「勝手に外注」することができる。例えば、日経電子版は芸能情報を自ら扱うことなく、サンスポに勝手に外注してしまえばよい(サンスポも喜ぶはずだ)。一方、無料の産経ニュースは有料の日経にリンクを張れない。
 これは、新聞がフリーペーパーをそれほど嫌わない理由と同じだ。

 いすれにしても、3割ルールがあろうとなかろうと、広告ベースで十分な収益(現在の数十倍の単価)がない限り、記事の公開には業界としてメリットがない。購読者に直接サービスしなければ、大切な顧客が馬鹿をみるし、新聞を買わない理由を自ら再生産していることになる。

郵便が届かない事故率(不着率)は?

手紙や小包が届かないことを「郵便事故」という。郵便事故に遭う確率はどの程度か。

朝日新聞(2004年)によると、郵便公社に持ち込まれた誤配、紛失は普通郵便(230億通)で35万通、書留(3億6000万通)が1000通なので、それぞれ0.0015%、0.00028%である。

ところが、誤配や紛失は、送った側と送られた側が別の方法で通信する関係でなければ分からない。通販業者が送ったダイレクトメールが届かなくても、宛名の人は気づかないし、通販業者は届いたかどうか確認しようとは考えない。

2001年、イギリスの郵便利用者全国評議会(Post Office Users National Council)が、どの程度手紙が消えてしまうかを探るため、15000通の手紙を出し、何通が無事届くか実験をした。その結果、17通が「消えて」しまった。これによると、イギリスでは0.11%ということになる。

これに対して、伝統あるRoyal Mail(英国郵便公社)は、その確率では毎年5000万通がなくなっていることになり、毎週数トンになるではないかと反論した。Royal Mailとしては未着届け出件数である約50万通ではないかという。しかも、住所が間違っている(古い住所を書いた=住所変更を伝えていない場合)や、配達後の社内・家庭内で紛失するケースも含まれているという。

つまり、事故率を計算することは非常に難しい。ただ、日本が例外的に低いことは間違いないだろう。
(鍵のかかる郵便箱や表札さえ用意しないで、期待したものが届かないという人間は頭がどうかしている。私立探偵が最初に覗くのは郵便入れだ。十中八九、配達後に誰かに抜かれているのだ)

航空評論家の杉浦一機によると、東京ーニューヨーク間の飛行機が落ちる確率は17万8000往復に1回(0.00056%)。サマージャンボ宝くじで1等にあたる確率は1000万分の1、3等の1000万円は100万分の1なので、書留が届かないクレームを届ける人は、乗り込んだニューヨーク便が落ちる程度(片道なので0.00028%)に不幸で、そもそも、10枚セットで宝くじを買って1000万円に当たらないような人間(0.001%)には起きない。
ちなみに、19世紀の数学者、エミール・ボレルは「人間生活で無視できる確率は100万分の1」と言ったそうだ。

ベルファストにはRoyal Mailの「未達郵便局」があり、行き先の分からない手紙が3か月保管される。また、郵便は時間を保証しない。オーストラリアで投函された葉書が112年後にイギリスで配達されたこともある。

どこの国にでも、中身を盗んだり、配達をサボったりする配達員はいるものだが、その比率はなかなか分からない。電子メールの普及で、どの国でも郵便事業は赤字に陥っていて、配達員の待遇も悪化している。郵便事故が頻発するアメリカでは、フェデックスやUPSが配達証明付きのビジネス文書郵送事業をしている。一通10ドル以上するが、郵便物の状態を追跡できるシステムを備えている。

普通郵便には免責条項があり、そのおかげで安価な郵便料金が全国民に提供されている。もし、賠償請求を認めると、すべての手紙が数百円以上になり、かつ、内容物の点検が必要になってしまう。現に書留料金や宅急便はそれくらいかかる。(電車が遅れても賠償請求できないのと同じだ。もし特急料金に遅延賠償を認めると、現在の倍額以上になるらしい)
郵便料金が一律なのは、国の政策(ナショナルミニマム)ではなく、局員が距離に応じて一つ一つ料金を計算するよりも、一律料金で切手を貼ってもらった方が全体としてコストが削減できるという経営上の判断だ。だから、賠償を認めると、一律料金を続けることもなくなるだろう。

フェデックスなどにビジネス文書輸送を開放した結果、郵政公社が利益の薄い普通郵便ばかり担当させられることになる。そんなクリームスキミング(おいしいとこ取り)を許すことが、国民全体にとって本当にいいことなのか、考え直さなければならない。