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大量データの可視化:米中間選挙のTweet

11月2日投開票の米中間選挙に向けて盛り上がるNYTimesで、脅威のマルチメディアチーム(Tom Jackson, Sarah Wheaton, Edward Martinet and Aaron Druck)が、上院議員選・知事選の候補者に関するTweetがどのように流れたかを表現している。
ここから何を読み取るべきかの指針が全くないので、ただの技術披露にすぎないような気がしないでもないが、この背後に隠れたデータ量は凄まじい。


各サークルは候補(当然青が民主党)、位置は相対的な地理(東海岸は左側)。
10月21日から11月5日までの時間経過をアニメーションしながら、各候補についてTweetされた件数を円の面積で表現する。話題を巻き起こした候補が数時間爆発する様子がわかる。

円をクリックするとTipsが現れ、個人に注目できる。
さらにクリックすると別モードに移り、時間経過につれて、大量の候補者宛てTweetと候補者からの返信Tweet、候補者からのRetweetが銃弾のように出入りする。
対立候補を並べることもできる。
このモードでサークルをクリックすると、その時刻前後の米主要サイトの関係ニュースを表示する(詳細な検索条件を設定した)リンク(たとえばこれ)にジャンプする。
各銃弾にmouseOverすると、tweetの内容が表示される。

技術的にすばらしいのは
1)フラッシュ・アニメーションでありながら、停止した瞬間に対してリンクを生成することができ、あるコマの画面を他人と共有できる。
http://www.nytimes.com/interactive/us/politics/2010-twitter-candidates.html#detail/johnkasich--ted_strickland/1288053905684
2)表示するTweetの内容のうち、下品なものは「redacted due to inappropriated language(不適切な言葉なので編集しました)」として表示される。これを自動処理しているのか!
日本ではTweetにも著作権が発生してうるさくいわれるので、とてもじゃないがこのような転載はできない。

大量データの可視化:Netflixのビデオ貸し出し

最初は何の地図だか分からなかった、NYTimesのA Peek Into Netflix Queuesについて、SNDのBlogが舞台裏を紹介している。全米最大のビデオレンタル会社netflixから提供された貸し出しデータ(借りた人の郵便番号)を地図に表示しているだけなのだが、例えば、同性愛問題の「Milk」のような映画ではワシントン中心部で評価が高いなど、なかなか興味深いデータになっている。

SND Blog:The making of the NYT’s Netflix graphic

元々のグラフィックスはプリント版(都内版)の1ページを占める大型infographics。著者のKevin QuealyはNYTimesのグラフィック担当で、物理学科卒でミズーリ大ジャーナリズム学科の院卒。こういう人材がマルチメディアを担っている。

データはJo Craven McGinty記者がNetflixに郵便番号別人気上位50タイトルのデータ提供を依頼し、190万レコードの映画評価データを得た。(市場規模が分かってしまう貸し出し件数は拒否された)

しかし、データで全米地図を塗り分けても興味深い分析ができるような分布は見つからなかった。そこで、都市部のみを引き出すことにした。

  • サウスブロンクスとマンハッタン、ワシントンの東部と西部では鮮やかな違いがある
  • Flashで35000ある郵便番号区域を高速で塗り分けることが難しい
  • 数量情報ではないので郵便番号を統合することもできない

などの理由もあった。

対象となる都市を選んだら、都市別にshapefileを作成し、ArcViewで統合し、5000ポリゴンまで刈り込んだ。
映画の選択には、「どの映画が人気か」「どの映画の評価が高いか」が読者の関心だという観点で10以上の試作品を作った。問題は、映画の選択と都市の選択をどのように両立させるかだった。

映画のサムネイルとMetacriticの評価はネットで検索をかけ、Rubyで自動収集スクリプトを書いた。(なにせ、全米各地のベスト50が何種類の映画を意味するか予想がつかない)
同様に、タイムズ自身による映画評へのリンクもGoogleで検索して収集した。

データはできる限りID番号化して、actionscriptがparseする時間を節約したという。

プリント版グラフィックス
データをすべて詰め込み、検索できるようにしたいという誘惑はあり、かつ、思いもしない場所のデータ(基地のある街での映画評など)を読者が探すことを期待もしている。しかし、一見して分かり、操作が簡単でなければ、多くの人に見てもらえない。

後半のGooglleでサムネイルを収集するところは、フェアユースが明文化されていない日本では難しい。
加えて、スクリプト収集は、よほど簡単に書く力がないと、最初から手作業した方が早く終わったということになりがちで、必要なデータが大規模である場合しか使えない。

大量データの可視化:wikileaksの場合

コロンビア・ジャーナリズム・レビューに、NYTimesと英GuardianがWikileaksのデータをどうビジュアル化したかについてレポートが載っていた。

CRJ:Visualizing the Iraq War Logs
Wikileaks:イラク戦争文書も協調展開
Wikileaks:アフガン文書を公開、米英独3紙が協調展開

ガーディアンのSimon Rogers(英ガーディアンのData Journalismの人)によると、アフガン文書の際の経験から、データをまずExcelに落として分析することから始めた。その結果「最大の死因は殺人で、隠れた暴力がイラクで続いていることが分かった」という。
データをダウンロード可能にした結果、プリンストンの教授からデータの不完全性、データの作成過程、報告されない暴力の存在について指摘を受けた。「このような分析をしてくれるのは研究者だ」という。
ビジュアル化にあたって、最初はGoogleFusionとGoogleMapを使ったが、点で人の死を表現することに疑問は残った。

NYTimesでは4人がこのプロジェクトに関与。17000のGPSデータ(事故の発生場所)を年代別に分割した。この結果、2006年後半からバグダッドの治安が急速に悪化したことが分かったという。しかし、大量データが却って現実感をなくしてしまうことを懸念した。

両紙は、大西洋の両側で別々に、特定の日に注目することを思いつく。

タイムズは2006年12月20日を選び、事故の種類、原因、犠牲者の国籍を数え上げた。とりわけ重要なのは、報告に重複がないかを一つ一つ確認することだった。ある日は84人死亡のデータがあったが、別の部隊からの報告を突き合わせると28人だと分かった。このようなデータの欠陥があるので、地図にはカウント数を掲載しなかった。

ガーディアンは2006年10月17日を選んだ。James Meek記者がデータをまとめ、Alastair DantとMariana Santos(このプロジェクトのために雇用されたフリーランスで、ビデオの経験があるため、映画風の構成になった)がフラッシュアニメーションを制作した。

タイムズが淡白だった理由は米中間選挙で人的余裕がなかったこともあるらしい。

両紙とも、あまりに多くの情報を詰め込んだり、過度にinteractivizing(インタラクティブ化)する危険性を意識している。「動くからといって、それは必要なのか」

バーンズ&ノーブルがNOOKカラー版

アメリカの三省堂、バーンズ&ノーブルが電子書籍端末NOOKのカラー版を発表した。電子ペーパーを使ったモノクロ版と異なり、カラーの液晶タッチパネルを採用した。つまり、Kindle型ではなくiPad型になった。
その結果、動画やインタラクティブなUIが可能になったが、使用時間は8時間に激減した。これは仮にカラー電子ペーパーになっても改善しない。(動画である以上、毎秒猛烈に画面の書き換えをしなければならないからだ)

本の冊数は多いが、3G回線が使えないのでKindleほど便利という訳ではない。紹介ビデオを見る限り、雑誌も静的なコンテンツに留まるので、iPadやアドビの提案するアプリ型雑誌ほど未来を感じない。悪いところを合わせたような気がする。
ただ、android端末が2万円という意味は大きく、新聞社が自社専用端末として配ることができるようになった。

NOOK colorKindle 3
249ドル139ドル
7インチカラー液晶6インチ白黒電子ペーパー
15.8オンス8.5オンス
8時間最長1ヶ月
無線LAN3G通信網と無線LAN(HotSpot無料)
PDF,epub,word,excel,mp3,mp4PDF,epub,word,excel,mp3
200万冊72万冊、新聞定期購読、著作権切れ180万冊
貸し借り、立ち読み、SNS機能貸し借り、冒頭試読、
辞書引き、読み上げ、一度購読すればPCや携帯でも読める

総務省の電子出版環境整備事業に10件

総務省の電子出版環境整備事業で、委託先候補10件が決まった。業界として何が課題だと認識されているかよくわかる。

主な企画は
  • 各種の電子書籍配信フォーマットに変換可能な、オープンかつフリーな電子書籍の交換フォーマットを策定する「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」
  • 筑波大学の提案による「メタデータ情報基盤構築事業」
  • 日本雑誌協会の提案による「電子出版コンテンツID推進プロジェクト」
  • イースト株式会社の提案による(いわゆる縦中横やルビなど)「EPUB日本語拡張仕様策定プロジェクト」
それにしても、総務省の発表文はなんのことか分からない。
「新ICT利活用サービス創出支援事業」は、ICTの徹底利活用の促進による持続的経済成長、新たな市場の創造等を実現する観点から総務省が分野・課題を提示し、ICTを利活用した新しいサービスの創出に向けた開発・実証を通じて、新しいビジネス分野の基盤となる技術の確立、技術標準化、運用ガイドラインの策定等を実現するプロジェクトの実施を委託するものです。
平成22年度の本事業は、急速に立ち上がりつつある我が国の電子出版市場において、電子出版に関する技術的課題の解決、電子出版ビジネスの基盤となる技術の確立、民間による標準規格の策定やルールの確立が急務となっていることを踏まえ、出版分野へのICTの徹底利活用の促進による持続的経済成長、新たな市場の創造等を実現することを目的とします。

プレスリリースと各プロジェクトの概要

総務省発表資料

アドビが電子出版システムを発表

video
一番感心した場面。iPadもAndroidも同一ソース(もちろんコンテンツ側のフォーマット)らしい。
アドビが、開発者向け技術展示会AdobeMAX2010で、Digital Publishing Suiteという電子書籍制作システムを発表。コンテンツ作成、配信、課金、効果測定までを包括的に行う製品・サービスの組み合わせを来夏前に提供するという。
詳しくはマイコミ:アドビ、新たな電子出版ツール「Adobe Digital Publishing Suite」発表

カリスマ主婦のMartha Stewartと、コンデナストのJoe Simonが登場し、New Yorker電子版がさまざまな画面サイズに合わせて、テキストやグラフィックなどがダイナミックに配置されるデモを披露した。必ずしもFlash一辺倒ではなく、HTML5も積極的に採用している。
ハードウエアレンダリングが可能な端末では驚くほど軽快に動いている。(電池が心配だが)


Adobe featured blog:MAX 2010 – Day One Keynote Highlights

FlashがAndroid携帯だけでなくGoogleTVにも搭載されることも発表された。できるだけ多くのスクリーン(PCや携帯、ゲーム機、テレビ)が同じ枠組みで使えるようにするOpenScreenProjectは着実に進んでいるようだ。

ちなみに、参加者(有料)には、モトローラの最新アンドロイド携帯Droid2とGoogleTVがプレゼントされたらしい。

Politicoが政治情報サービス

ワシントンの政治情報サイトPoliticoが高級有料サービス「Politico Pro」を来年開始する。
国民健康保険やエネルギー政策などの部門を設け、一テーマあたり年間1495-2500ドルの購読料を取る。ブルームバーグ端末の政治版だ

企業やロビイスト向けの情報としてはCongressional Quarterly(CQ)やNational Journalがあり、これに対抗する。政府自身が有力な購読者になる。
また、ブルームバーグも60人の記者・アナリストを新規採用してBloomberg Government serviceというデータベース端末(年間5700ドル)を計画している。

CQは戦後ネルソン・ポインターが地方紙にワシントン情報を配信するために設立。いまでは、メディアだけでなく、議員や大手企業にも情報を提供している。日本の特派員もCQが提供する記者会見のtranscriptを使っている人が多いはずだ。人事情報から法案の扱い、議会日程などをリアルタイムに配信している。
メインは有料サービスだが、CQpoliticsというサイトも運営している。
デジタル配信は1984年のダイヤルアップ時代から始めている。2009年にSt. Petersberg紙から英エコノミストに売却された。

一方、National Journal(元CongressDaily)は「1週間待つに値する記事だとうそぶいて、ワシントンで最も遅れたメディア」だったが、今年になって従業員の半分を希望退職で減らしたうえで、100人を新規採用し週刊誌のデザイン刷新とオンラインサービスを強化した。会員制(年間2000ドル以上)だが、一部の記事は25日から公開するようになったため、議員・候補の詳しい経歴などはここでほとんど読むことができる。(いずれpay per viewに移行するらしい)

NYT:Politico, Seeing a Market Need, Adds a Paid News Service
NYT:Debut for a Nimbler, Newsier National Journal

トリビューンが新再建計画を提出

シカゴトリビューンやLAタイムズの親会社、トリビューン社が22日、デラウエア破産裁判所に2回目の更生計画を提出した。まだ、chapter11から抜け出ていないのだ。
JPMorganやChase、ヘッジファンドなどの債権者からは合意が得られているが、その他の債権者から29日までに対抗案が出される公算。

債権者が元オーナーSam Zell氏らLBO主導者を詐欺的譲渡を行ったとして連邦地裁に訴えることが破産裁判所によって許可される見込み。二段階に分けて実施されたLBOについて、前半と後半で債権者が違うため、意見の対立が解けていない。(後半の買収に資金を貸した方は「騙された」と思っている)

新提案内容によると、後順位(junior)社債保有者は32%の払い戻しを、一般債権者は元債権の35%の支払いを受ける。シカゴトリビューンなどの子会社との通常取引債権は全額支払われる(これを保護しないと再建は無理)。後順位債権者の申し立ては設立するlitigation trustが引き受けるという切り離しが行われる。
この提案がまとまらない場合、親会社たるトリビューン社は破産法7条の清算手続きに入る可能性がある。同社は2011年に2億6300万ドルの純収があると説明し、受け入れを求めているが、こういう修羅場の業績見通しは当てにならないものだ。

シカゴトリビューンは読者向けに経過報告をしている。
Given the recent coverage of Tribune Co., the corporate parent of Chicago Tribune Media Group, we want to address questions regarding our culture and work environment. We can assure you that the Chicago Tribune Media Group, which operates this newspaper and many other print and digital products, is built on integrity, honesty and professional decorum.

We hold ourselves to a high standard of conduct and always have. Our ability to deliver on your expectations is driven by our talented employees and their commitment to these principles:

We believe everyone should be treated fairly and work in a respectful workplace.

We are focused on creating an innovative and collaborative environment.

We believe and invest in communication, actively listening to employees and customers.

The Chicago Tribune is dedicated to bringing you news and information that are relevant, engaging and unique. We stand up for the community every day through our watchdog reporting, which is holding government accountable and driving change across the region and state.

We’re Chicago’s leading marketplace, connecting consumers with the goods and services of our advertisers. The Chicago Tribune Media Group delivers results for clients by offering customized solutions through the widest reach of any media company in Chicagoland.

We’re passionate about meeting customer expectations and value your feedback. You can reach us by e-mailing customerservice@tribune.com.

Thank you for your loyalty.

Tony Hunter, President, Publisher and CEO
(以下主要幹部名が続く)

CEOのRandy Michaelsが辞任


トリビューン社の経営評議会が22日、CEOのRandy Michaelsを解任した。「ラジオ時代の同僚などファミリーが粗野で性差別的な振る舞いで会社に泥を塗った」という社内の批判があったという。
Randy Michaelsは不動産王Sam Zellが連れてきた元ラジオパーソナリティーで、新聞社の指揮を執るには少々荒々しすぎたらしい。更生期間中でありながら、取締役に合計50億円以上のボーナスを支払っており、社員の不満が充満していた。
伝統ある組織に乗り込んできた人の通例で、怪しい経歴の取り巻きを多数採用し、混乱した社内の様子がNYTimesに報じられると、怒った幹部がnastyなサイトへのリンクを含んだ従業員宛メールを出して辞任に追い込まれた。
辞任のニュースが流れた日、役員室のRandy Michaelsの机にはハロウィーンで使う墓石のおもちゃが置かれていた。社員のいたずらとも、本人自身が置いたとも言われているという。

今後の経営は4人の経営委員会メンバー(Eddy Hartenstein=LATimes発行人、Tony Hunter=Chicago Tribune発行人、Nils Larsen=トリビューン社最高投資責任者、Don Liebentritt=リストラ担当役員)に委ねられるが、再建案が承認されれば、新オーナーとなる銀行・ファンドが新メンバーを選出されることになる。

イギリス3題:FT電子版が5割増

英FTの親会社Pearsonの第3四半期決算発表によると、電子版の購読者が50%増の18万人を超えた。印刷部門も好調で、合計売り上げは11%増。

Pearson nine-month Interim Management Statement

同じPearsonの出版部門ペンギン社も、電子書籍の売り上げが3倍になり、合計売り上げでも5%増えた。同社の電子書籍タイトルは16500冊もある。教育部門でも、e-schoolを350万人が受講し、7%の増収になった。27カ国に428校ある英語学校Wall Street Instituteの買収も効いているらしい。

ロンドンタイムズ電子版は月間362000人

ニールセンによるアクセス数調査によると、有料化した7-9月の月間平均ユニークユーザー数が362000人になった。

Nielsen estimates 362,000 Britons behind the Times paywall

唯一見ることができるトップページのアクセス数は178万人で、その2割がパスワードを打ち込んでpay wallを超えたことになる。クレジットカードで購読料を払った人か、印刷版購読者(50万部)かはNielsenの立場では分からない。
ただし、導入前の試読サービスに15万人が登録していることも割り引かねばならない。
ちなみに有料化前のアクセス数は310万人。ニールセンは有料サイトの36万人には高い広告価値があると書いている。
タイムズの有料化でDaily Mailがトラフィックを急増させ、英トップニュースサイトに躍り出た。
ニールセンの月間平均UV(万人)
銘柄2010.4-2010.62010.7-2010.9
Mail Online519538
Guardian482465
Telegraph506450
Times310178

インディペンデントが要約版「i」を発行


インディペンデントが26日、要約版タブロイド「i」を発刊した。若者向けに派手なデザインと短い要約、小さな活字、安い価格(20ペンス)が特徴。マトリックス状のメニューで、通勤時に読み切れるように編集されているので、イギリス版USA Todayあるいは英版R25という印象だという。
創刊号は56ページだった。
親新聞Independentの1ポンドとの価格差は微妙だ。ガーディアンが高級紙として中道化する一方、落ち目のインディペンデントが「忠実な読者」に引っ張られて左傾化してしまう様子は産經新聞の鏡像だ。内容を若者向けにしなければならないのに、要約版では意味がないと思う。

AP通信の加盟費収入、2年で3分の2に

Tom Curley, president and chief executive of The Associated Press, at the organization's annual meeting in April.
 AP通信のTom Curley社長が、加盟社との会議で、APが新聞社から受け取る配信料収入は2年間で220億円から140億円に減り、AP全体の収入における割合は2割にまで縮小したと述べた。
今後も毎年5−7億円程度減り続けると見込んでいるため、商業写真の販売やソフトウエア開発、海外映像配信に力を入れるという。
ポインターのRick Edmonds記者によると、脱退したCNNが何らかの手段でAPを見ているようで、加盟社向けに配信した数分後には「AP通信が報じた」と報じることがあるという。APは音楽産業を手本にコンテンツの無断使用を追跡する仕組みを研究中で、収益化を期待しているそうだ。

年金削減案を組合と交渉


Tom Curley社長が、組合と交渉している年金プランについて、職員に送ったメールがpaidContent.orgに掲載された。いわく、

わたしがAPに来た時から、年金プランと維持できるようにできる限りのことをしてきたが、残念ながら、業界の経済現状からもはや不可能になっている。メディア企業だけでなく、Fortune100社の半分以上が年金プランを凍結している。

我々は、定年後の利便を最大化する方策を探す努力をしている。2日以内に詳しい提案と影響に関する情報を送る予定で、交渉がまとまり次第、詳しい情報を提示することを約束する。

アメリカの新聞販売数が5%減少

米ABC協会が発表した2010年度上半期の新聞販売部数は、半年前と比べて平日版が4.99%(半年前は8.74%減)、日曜版が4.46%(同6.54%減)減少した。

現在のアメリカの深刻な事情は、「本紙はABC発表で増えた」「本紙の販売部数が安定化した」などと挙って自社の公認売上げを報じていることに現れている。
上位25紙で部数が増えたのはWSJとダラスモーニングニュースのみ。減少幅が小さくなったものの、底入れの兆しはない。
注目すべきは
  • 広告収入の減少を補うために値上げした影響が出始めた
  • 購読者限定サイトに移行したNewsdayが二桁の落ち込みを記録。有料化が購読者維持に繋がるという目算が外れつつある
  • サンフランシスコ・クロニクルも二桁減。ベスト25から脱落寸前になった
  • 上位16紙の合計は1000万部で読売新聞と同じ
ことだと思う。Newsdayは本当に意外だった。

過去10年間で比較すると、新聞市場の縮小には驚かないではいられない。

主な新聞の販売部数推移(2000-2010、一部推定)
2000年
2005年
2010年

ABCデータは過去にさかのぼることは難しい。(NYTimesは過去10年間分のデータを公表している)

2010年9月の米新聞販売部数(ABC paid circulation)
銘柄平日版前年比日曜版前年比
Wall Street Journal20611421.8発行せず
USA Today1830594-3.7発行せず
New York Times876638-5.51352358-3.4
Los Angeles Times600449-8.7901119-8.4
Washington Post545345-6.4764666-7
Daily News of New York512520-5.8568266-5.9
New York Post501501-1.3339115-1.2
San Jose Mercury News477592n.a528536n.a
Chicago Tribune441508-5.2768073-4.4
Houston Chronicle343952-10.5515236-5.9
Philadelphia Inquirer342361-5.3477586-4.3
Newsday314848-11.8375874-9.2
Denver Post309863-9.1472664-4.6
Arizona Republic of Phoenix308973-2.5457059-0.4
Star Tribune of Minneapolis297478-2.35046165.7
Dallas Morning News2644590.2373815-4.3
Plain Dealer of Cleveland252608-6.8348324-10.8
Seattle Times251697-4.5341265-5.1
Chicago Sun-Times250747-9237367-5.5
Detroit Free Press245326-9494013-11.8
St. Petersburg Times239684-0.23772351.9
Oregonian of Portland239071-4.1292800-3.5
San Diego Union-Tribune224761-7.4286518-7.4
San Francisco Chronicle223549-11.2282445-7.9
Star-Ledger of Newark223037-9.3346436-6.6

paidContent.orgによると、電子版の契約数は以下の通り。

Wikileaks:イラク戦争文書も協調展開

Wikileaksが22日、イラク戦争に関する39万枚の米軍機密文書「Iraq War Logs」を公開した。「極秘」ではなく「秘」扱いの文書で、2004年から2009年までが対象。アブグレイブ刑務所の捕虜虐待事件のような重大事件の文書は含まれていない。
この文書は量こそが内容で、カウントされている死者は民間人66081人、敵23984人、イラク政府軍15196人、友軍3771人で、「民間人死亡率は同時期のアフガンより5倍も高い」という。(ただし、両国とも人口は3000万人でアフガンは20000人なので単純計算なら3倍)

アフガン文書と同様、欧米の主要メディアに事前にアクセスさせ、協調展開する手法をとった。今回は仏ルモンド、アルジャジーラ、BBC、Channel 4、スウェーデンテレビのSVTも参加した。
Wikileaks:アフガン文書を公開、米英独3紙が協調展開

米NYタイムズ

NYTimesのトップ記事は、準武装組織である民間警備会社の多用が混乱(死者負傷者のこと)を増しているという内容。
記事の中に該当する機密文書へのリンクがあり、NYTが略号のポップアップなどを施した読みやすい形に編集している。Secret Dispatches From the War in Iraq
バグダッド市内で1日で114人が死亡した2006年12月20日のフラッシュ、および各年の累積死者の場所をグラフィック化している。これを実現するのにどれほどの技術が必要か。また、アメリカ軍の地理情報のデジタル化度合いも驚愕に値する。

独シュピーゲル

シュピーゲルもIrak-Protokolle(イラク文書)という特設欄ビデオFlash地図を用意した。
2007年7月にロイター記者を含むイラク市民をヘリコプターから無差別銃撃した事件を文書で追い、あの事件が簡潔な文書で報告されていることに注目している(天からの業火)。最初の文書の段階で「メディアや国際的に問題を生じるかもしれない」という分類がされていることにも注目すべきだと思う。

文書は兵士が現場で報告用に記録した生データなので、「無作為抽出した文書の中にでも」矛盾・欠損があるということも報告しているが、「にもかかわらず、このデータは金鉱山だ(Trotz dieser Schwächen ist das Material eine Fundgrube )」としている。

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英ガーディアン

同紙のWarblogは非常に具体的な記事が多い。
イラク治安部隊による捕虜の虐待(暴行、電気ショック、火あぶりなど)を見たアメリカ海兵隊員の報告が「調査の必要なし」と処理されたこと、自爆テロ未遂として逮捕された後、警察内で足を打たれ、さらに肋骨骨折の暴行を受けたイラク人の記録も「調査の必要なし」と処理されたことなど、「イラク人によるイラク人への不法行為を調査してはならない」という、2004年1月に発行された命令「Frago 242(fragmentary order)」が、実際にはイラク人による虐待事件にお墨付きを与えていると告発している。
Secret order that let US ignore abuse
また、Crazyhourse 18というコールサインを持つアパッチヘリ(ロイター記者銃撃と同一機)が、トラックを攻撃した際、乗っていたイラク人2人が飛び降りて、ヘリに向かって投降の意志を示したため、ヘリが処理を問い合わせたところ、基地にいる「法律家」が「飛行物に対して投降はできない。彼らは有効な標的だ」と返答、ヘリは2人を銃撃して殺した話も取り上げている。
Apache crew killed insurgents who tried to surrender
英政府が否定してきたBodyCountにも関わらず、文書によって15000人の民間人死者が明らかになったこと(Iraq war logs reveal 15,000 previously unlisted civilian deaths)、少なくとも18件の同士討ちが起き、英兵士を含む41人の死傷者がいること(How friendly fire from US troops became routine)なども指摘している。
フラッシュによる「ある一日」は渾身の力作。24時間のタイムラインを使って、どれほど混乱していたのかを表現している。
なお、Data Blogは同紙による集計表をGoogle Docsで公開している。これも驚愕に値する。

仏ルモンド

はじめて参加したためか、大株主に軍需産業が残っているためか、フランス的歯切れのよさがない。ガーディアン同様、米兵が報告した収容所内部での暴行(La torture, pratique courante des policiers irakiens)、検問所でパニックになって殺される市民の話などを出稿している。
フランスらしい視点として、アメリカの民間警備会社「Blackwaoter社」を傭兵として捉えていることだ(Le rôle ambigu des mercenaires en Irak)。

マルチメディア記事は、オーディオスライド「検問所から見た戦争」、フラッシュによる犠牲者グラフなど。

代表Julian Assangeに、各国政府の迫害続く

7月のアフガン文書公開以降、WikileaksのスポークスマンJulian Assange氏への迫害が続いている。
スウェーデン政府は、「ホテルで暴行された」と申し立てた女の訴えを受けて一時逮捕状を出しただけでなく、最近でも同国政府が居住許可申請を却下している。この北欧の国の根性のなさには失望させられた。平和賞ではなく経済学賞を任せたのは、ノーベルの慧眼だ。
アメリカ政府は寄付の窓口になっていたオンライン決済会社(MoneyBookers)を「資金洗浄の疑いがある」と締め上げて、一時的ながら寄付を妨げていた。母国の豪政府も「アメリカに入国したら逮捕される」と渡米自粛を勧告していし、「米で訴追されたら協力する」と公言する閣僚もいる。
NYTimesによると、「今後数週間が最も身の危険があるだろう」と警戒しているようだ(WikiLeaks Founder on the Run)。9月にはストックホルムからベルリンへの飛行機で3台のパソコンがなくなった。来年にはイギリスのビザも切れるらしい。
NYTimesはアメリカ国内のWikileaks批判にも配慮して、暴君的なところがあり、支援を辞めたひとも多いこと、タリバンが暴露文書を調べる委員会を設立し、1800人のアフガン人をスパイとして追及していることも書いている。


USA Todayが統合編集局解体

USA Todayが2005年に開始した統合編集局を断念した。モバイル、タブレット向けの編集に対応するには統合編集局では無理だと判断したようだ。
一つは必要とされる素材と技術が大幅に違うからだが、Hunke編集局長は「読者が10歳から15歳程度若いので異なる表現スタイルが必要だ」と話している。

一連のリストラで、運動部部長にネット部門責任者になったり、トラベル欄を外注することにしたほか、調査報道チームを創設した。Hunke局長はデトロイト・フリープレスの印刷一部廃止を実行した張本人。

Poynter Blog:USA Today's "Radical Restructuring" Means End of Newsroom Integration, Universal Desk

GuardianやNYTimes水準のマルチメディアコンテンツを制作するには、そのチームが自ら取材するか、記者に対して強力な指揮権(あるいは教育)がないと不可能だ。それはある種の権力シフトになり、編集現場と技術担当者による不毛な喧嘩に終わりかねない。
労働市場が流動的なアメリカでは、双方をマスターした人間を集めるという「止揚」によって解決しつつあるが、日本では相当難しいかもしれない。

マルコフ連鎖

問題:ある街にはA紙、B紙の新聞しかない。
  • A紙の読者は翌月、5%がB紙に乗り換え、5%が購読をやめる。
  • B紙の読者は翌月、3%がA紙に乗り換え、7%が購読をやめる。
  • いずれも読んでいない人は翌月、3%がA紙の購読を開始し、4%がB紙の購読を始める。
A,B両紙のシェアはどの程度か?

A紙読者をx人、B紙読者をy人、いずれも読んでいない人をz人とすると、翌月のx,y,zは
と書けるはずだ。
行列部分Mをじっと見れば、M = P-1APとなるような行列A、Pが見つかる。(嘘。芝浦工大・横田 壽先生:行列の対角化を参照のこと)
Mn = (P-1AP)n = P-1APP-1APP-1AP..... = P-1AnPなので
つまり、どんなx,y,zの組み合わせから始めても、月日が経つ(nが大きくなる)につれて、A紙23%、B紙30%、読んでいない人47%に収束していく。
いつも収束するとは限らないが、どのような初期値でも収束するならエルゴード(ergodic)的というらしい。

統計ソフトRを使えば、面倒なことはやってもらえる。
> M <- matrix(c(0.9,0.05,0.05,0.03,0.9,0.07,0.03,0.04,0.93),3,3)
> M
[,1] [,2] [,3]
[1,] 0.90 0.03 0.03
[2,] 0.05 0.90 0.04
[3,] 0.05 0.07 0.93
> y <- eigen(M)
> y
$values
[1] 1.00 0.87 0.86

$vectors
[,1] [,2] [,3]
[1,] 0.3831823 0.4082483 1.564989e-14
[2,] 0.5017864 0.4082483 -7.071068e-01
[3,] 0.7754881 -0.8164966 7.071068e-01

> A <- diag(y$values)
> A
[,1] [,2] [,3]
[1,] 1 0.00 0.00
[2,] 0 0.87 0.00
[3,] 0 0.00 0.86
> P <- t(y$vectors)
> P
[,1] [,2] [,3]
[1,] 3.831823e-01 0.5017864 0.7754881
[2,] 4.082483e-01 0.4082483 -0.8164966
[3,] 1.564989e-14 -0.7071068 0.7071068
> m <- t(solve(P) %*% diag((y$values)^1000 ) %*% P)
> m
[,1] [,2] [,3]
[1,] 0.2307692 0.2307692 0.2307692
[2,] 0.3021978 0.3021978 0.3021978
[3,] 0.4670330 0.4670330 0.4670330
# とはいえ、無理矢理計算しても一瞬だ(%*%は行列のかけ算演算子)
> M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M %*% M
[,1] [,2] [,3]
[1,] 0.2463502 0.2260949 0.2260949
[2,] 0.3020781 0.3111308 0.2964768
[3,] 0.4515717 0.4627743 0.4774283
冷静に考えれば、固有値・逆行列経由より、力づくのほうが、計算量も少ない。

では、先に収束する値(シェア)が与えられたとき、最初の問題の数値はどのようなものだったと想定されるのか。(3次元から6次元を一意に決めることは無理だろうけど)

米非営利調査報道組織が合併

image 1
image 2

アメリカの非営利調査報道組織、Center for Public Integrity(CPI)が、ハフィントンポストの調査報道部門、Huffington Post Investigative Fundを吸収合併することなった。8人が移籍し、編集局は50人規模になる。
HuffingtonPostは基金2億円を移転、ナイト財団のInvestigative Reporting Initiativeも合併費用を提供する。HuffingtonPostは専用ページを設けて、配信協力する。

Knight Blog: Nonprofit investigative reporting: a merger and new reports

HPIFはアトランティック・フィランソロピー財団などの出資で2009年3月に発足、「電子カルテのリスク」などの記事を発表している。一方、CPIも「クリーン・コールの隠れたコスト」「タバコの国際密輸」「大学構内のレイプ」などの話題作(他メディアが追随したという意味で)がある。

NPO組織の存在感が増すにつれ、民間メディアの取材協力のハブになる動きもある。上記のKnight Blogでは、

を紹介している。


NYT3題:Boston Blobeに買収提案

NYTimes第3四半期は2.7%減収

NYTが19日発表した第3四半期決算は、収入が5億5430万ドル、前年同期比2.7%減った。広告収入がプリント部門で6%減、デジタル部門で15%増で、合計では1%減った。もっとも新聞部門は1.6%増に転じている。収支は430万ドルの赤字。
メディアアナリストは「テレビなどと違い、増収に戻ることはない」と断言している。
グラフのように、第3四半期は年間で最も売り上げが落ちる季節で、マクラッチーやガネットも減収になっている。

Reuter:New York Times,McClatchy quarterly revenues slip

CEOのJanet Robinsonは「プリント部門へコミットし続ける。今度何年も紙を印刷し続ける」と明言している。

Telegram&Gazetteのメーター方式

8月に親会社NYTimesの斥候として、メーター方式(月間10本まで無料)による有料化に踏み切ったTelegram&Gazetteが、有料化でユニークユーザーが増えるという信じがたい現象が起きたそうだ。

AllThingsDigital:A Newspaper Pay Wall Goes Up–And So Do Visitor Numbers by Peter Kafka

投資家向け会見でCEOが「驚いたことに、トラフィックが増えた」と述べた。ちなみに、調査会社ComScoreによると、8月の281000人から9月の294000人に増えた。
採用されたメーター方式は、恐らく「抜け穴」ができてしまうことを覚悟して、ブログやTwitterなどのリンクから流入したアクセスは無料閲覧の制限数にカウントしない。
著者のPeterは
  • 9月はたまたま、ブログやfacebook、グーグルで話題になった記事が多かった。もともと大規模なサイトではないから、よい方にブレた
  • 8月はトラフィックが落ちる季節だから
と勘ぐっている。

子会社Boston Blobeに買収提案

NYTimesのメディアブログ「MediaDecoder」によると、2100Trustというボストンの新興投資グループが、NYTimes社にNew England Media Company部門(ボストングローブ紙やTelegram&Gazette紙)の買収提案をしたという。
NYTimes側は「噂にはコメントしない」と素っ気ない。

Japanification:日本化

NYTimesでGreat Deflation(大デフレ)という連載が始まった。5年もすると忘れられてしまう新語をコピーライター並みに量産するエコノミストが、「消費者が消費をやめ、企業が投資を控え、銀行が金を退蔵するため、需要が激減してデフレスパイラルに陥ること」をJapanification(日本化)と呼んでいるという話を紹介している。

NYT:Japan Goes From Dynamic to Disheartened

文化現象なら「日本化(Japanization、日本語化という意味もある)」だろうが「中国化(Sinicization)」だろうが普遍的に起こることだが、政治経済分野では、それ自身が望んでもいないのに抜け出せず、もがいている状況が『他でも繰り返されるかも』という恐れがないと人口には膾炙しない。バルカン化(Balkanization)、フィンランド化(Finlandization)、英国病(The British disease)、ベトナム化(Vietnamization)に続く政治用語になるか、楽しみだ。

面倒なのは、本来「南ベトナム軍主体の戦争に転換する」というアメリカの政策用語だった「ベトナム化」が、日本では「泥沼化」の意味で使われるように、国名では意味範囲が大きすぎて、どの部分に注目しているのか、時代と立場によって意味がバラバラになりかねないことだ。

記事では、20年前に結婚したとき、5000万円のマンションを買って、ハワイに通い、ベンツの新車に乗っていた49歳の中小企業経営者が、旅行をやめ、ベンツを国産車に乗り換え、マンションを手放した「転落人生」を紹介している。

今となっては恥ずかしいことだが、20年前、「東京23区の土地代でアメリカ全土が買える」という話を、まんざらでもないという心持ちで聞いていたのだ。似たような話が上海あたりでは今ごろ流れているのではないか。
記事でも「1991年にエコノミストは『2010年までに日本はアメリカを追い抜く』と書いていた。日本のGDPは減っていない。アメリカが2倍になったのだ」と指摘している。かつての対日強硬派プレストヴィッツは、いま中国語を勉強中で、「もう日本には行かない」だって。

herbivores=草食動物、草食系 <->carnivore

Don't try this at your news site

ビデオカメラを使った人なら身にしみて分かることだが、現場でカメラを回せばなんとかなるというものではない。機械は簡単になったが、well-madeな映像に見慣れた現代人を満足させるのは並大抵のことではない。

アメリカのニュースサイトは、多くが動画対応しているが、大部分は系列テレビ局の映像の再利用で、NYTimesやWashingtonPostぐらいしか独自映像を制作していない。担当者はテレビ経験者が大部分。とてもじゃないが、一般記者やスチールカメラマンの再教育でなんとかなるものではない。(せいぜい、素材撮りができるだけだろう)

以下は、なにげなく見ている映像に、どれほどの職人技が隠れているかを、同業者が語っているビデオ。登場するのは、モーニング娘のパリ公演を撮影したフランス人カメラマンで、日本人映像集団を絶賛している。(もちろん専属だから可能なのだが)
これを見れば、日本の新聞サイトのニュース映像が見るに耐えない理由がよくわかる。現代の日本人がどれほどのクオリティーを当然のものとして期待しているかは、自分も含むことだが、驚いてしまう。
要は、良い子はまねをしないでねということだ。

ヴィクトル・ザスラフスキー「カチンの森」


著者はイタリア(カナダかも)在住ロシア人研究者。最近亡くなったそうだ。

カチンの森事件の経過より、それがどのように戦後露見し、しかし、半世紀以上どの政府も「なかったこと」として扱ってきたか。亡命ポーランド政府の報告書をチャーチルが対ソ協力を維持するために封印し、その後もずっと沈黙してきたこと、ゴルバチョフさえ公開を躊躇ったことなどが書かれている。
独ソ不可侵条約の「複雑怪奇さ」の裏には、領土分割の密約しかなかったことや、民族浄化と階級浄化の類似性の指摘など、2008年のハンナ・アーレント政治思想賞に相応しい小難しさがあるが、とてもジャーナリスティック。読みやすい翻訳はさすがみすず書房。

耳折り箇所
  • 捕虜管理は20年の粛清期間でノウハウ蓄積 捕虜の中にスパイを作り、グループ化の兆しを密告させた
  • 露見は紙一重 独ソ開戦でカチンの森がドイツに奪われた(ソ連が奪還できなかった)
  • ソ連発表は「逆説は秋」 遺体が冬服、指輪などが残っていた(ナチスは分捕り制度があったが、ソ連はなかった)


このような記事に広告を発行しないGoogle Adsenseの技術は驚くべきものがある。
例えば、航空機墜落の記事に航空会社の広告が相応しくないように、広告管理はメディア担当者(電通の新聞局)の神経をすり減らしてきた。Googleはこれを自動で行っている。

Programming Journalist養成課程

コロンビア大でデジタルメディアコースの開設された顛末が、MediaShiftに紹介されている。

MediaShift:The new breed of programmer-journalists

オンラインジャーナリズムで手がつけられていない領域に、工学部とジャーナリズム学科が共同してできることがあるのではないかという観点から、コロンビア大は2011年秋から「コンピュータサイエンスとジャーナリズム修士課程」を開設する。これまで独学で試行錯誤してきた世代が、教える側に回る段階になった。
米のProgramming Journalist養成教室
Northwestern大Medill校programmer-journalist修士課程(2008)
Irfan Essacomputational journalism講座
Sarah Cohenデューク大Practice of Journalism and Public Policy

コース開設の目的について、Duy Linh Tu助教授は「FlashとかPhotoshopとかの使い方を教えるコースだと思われているが、そうではない。むしろPhotoshopを作る人を教えるのだ」と説明している。
Julia Hirschberg教授は「メディアのIT部門は記者が使わないソフトを作り、記者はプログラム処理できないソフトを要求する。我々は両方とも分かる世代を育てたい」という。

応募には情報処理の学位が必須で、ジャーナリズムの学位は必要ない。Javaが書ける学生に取材方法を教えることはできるが、ジャーナリズム専攻学生にJavaを書かせることは諦めている。
この点は先行するNorthwestern大Medill校も同じで、文系記者を救うことは目指していない。問題は、そのような優秀なバイリンガル学生が、情報通信企業に比べて大幅に報酬が低いジャーナリズムに向かうかどうかだという。いまのところ卒業生は仕事に困ることはないという。

菅原琢「世論の曲解」

著者は東大先端研准教授で、蒲島−御厨という、非伝統的だったのにいつの間にか東大の大看板になった先生のライン。計量政治学なんて昔は参考程度だったのに。
統計学の難しい記号を使わなくても、キレる頭があればデータ分析はできるというのは、デュルケーム「自殺論」以来変わらない。

師匠を含め、評論家やマスコミの世論調査解釈を切り刻んでいる。「ネットを見過ぎだ」というのは痛烈。たまたま見たデモを過大評価する悪癖は尖閣の渋谷デモでも再現された。日曜日に日比谷公園に行けばデモなんて飽きるほど見ることができる。

耳折り箇所
  • グラフ表現 民主系候補の結果=横軸が04年得票率順で選挙区を並べ(連続値ではなく順位だけ)、縦軸で07年の上昇分を表す(p90)
  • 報道2001調査 麻生人気の浮上の過程=首相候補の選択肢が減ったから
  • 内閣改造は支持率を向上させる=毎日・朝日は質問文を変えないので変わらない、読売は「内閣を改造しました」と前置きするので向上する
  • 振り子は戻らない 自民の勝ち馬投票の解放=横軸に候補者得票と比例得票の差(取り過ぎ分)、縦軸に得票率変化分(p257)

GlobeAndMailが過去最大の紙面改革

カナダの全国紙グローブ・アンド・メイルが1日に「創刊以来の最大の紙面改革」を実施した。「Newspaper1.0は死んだ」といい、スクリーンで見るNewspaper2.0も立ち消えになり、「コンテンツとコミュニティ」の3.0が始まるという。
NJL:Doubling down on print: Canada’s Globe and Mail unveils a new print edition to complement the web
CJF:Stackhouse’s new Globe
CJF:Globe redesign: Leaner, sleeker, and better dressed

北米で初めてハイグロス紙(一部だけ)を使った全ページカラー印刷で、雑誌のようなタッチで、短いパンチの効いた記事、サイドバーやグラフィックスを多用し、「もう一度、プリントへのコミットメント」を詠っている。ウェブサイトも紙面に合わせたデザインに変更した。
大幅な紙面改革の通例で、読者からは否定的なコメントが多いらしい。(1週間も経てば、昔どんなレイアウトだったか忘れてしまうのに)

記者を20人増やし、18年間17億カナダドル(1350億円)の印刷契約をTranscontinental社と結んだ。(最新輪転機は輸送中にトラックが崖に衝突し、破損したらしい)

Stackhouse編集局長は「これは、プリント版がオンラインニュースの補完物となるということに賭けているのだ。オンラインでニュースを見ている人に、毎日立ち止まって、世の中が理解できるような新聞紙(insightful, show-stopping journalism)を発行する」という。海外8支局、紛争地への特派員派遣も維持する。
局長は「アメリカとは違い、昨年読者は5%増え、平日読者は7%増え、デジタル部門は28%増収、紙も10%増収になった」と述べ、プリントに力を注ぐことを明言したという。

グローブ社はモバイルチームを雇い、スマートフォンやタブレット向けにもコンテンツを出す計画。

だが、オンライン部門の収入は15%にすぎず、カナダの貧弱なオンライン広告市場、オンラインではアメリカの巨大メディアと競争することになることなどを考えると、紙に投資することも経営的には合理的かもしれない。

新聞協会賞の差し替えはあるか

update:日本新聞協会は6日、新聞協会賞追加受賞者として、「大阪地検特捜部の主任検事による押収資料改ざん事件」を選んだ。板橋記者は、東京地検の検事にまで噂が届くほどの優秀な記者だそうだ。もっとも受賞報告記事を書いたキャップはとんだ恥知らずだったが。

大阪朝日が9月24日、新聞協会賞のニュース部門に「大阪地検特捜部のFD書き換え」(板橋洋佳記者)を追加応募した。
今年の応募作は不作で、一応、東京読売「核密約文書 佐藤元首相邸に」が選ばれているが、数年前の日経富田メモとは月とスッポン。新聞協会は、久々のメガトン級スクープの追加応募をどう扱うのだろうか。受賞作発表済みという形式的失格の口実は十分。10月15日の新聞大会での表彰式までに差し替えがあるか、興味津々だ。

新聞協会賞の権威がいまひとつなのは、選考過程が不透明であることではなく(ノーベル賞と同じ)、結果がいま一つだからだ(レコード大賞と同じ)。
会員で組織する選考委員会(分科会)が審査するため、数で勝る地方紙の声が強くなり、全国紙や通信社が不利だと昔からいわれている。時事通信が東京三菱合併の特報を日経に配慮して引き上げたように、情けない話もある。

EdgeFirst:[調査]新聞協会賞にホームアドバンテージはあるか?
柴田鉄治のメディア時評:日本のピュリッツアー賞は

比較のため、アメリカのピュリツアー賞をみると、そもそも、銀行合併などの1発限りで公共性のないスクープなどは全く受賞していない。事件の大小ではなく、同業者が手法や技量を評価しているからだ。「発表先取り型」が全く評価されてない事情は以下の記事に詳しい。
現代ビジネス:ジャーナリズムは死んだか「ピュリツァー賞と日本新聞協会賞はこんなにも違う」

日本の場合、フリーを含む個人応募ができず、要するに、ジャーナリズムの賞ではない。受賞経験者を含む同業者のjuryによって評価する選考方式が採用できないから、単なる幸運なのか、能力と努力の結果なのか、見分けがつかない。(報道写真部門は本当に微妙なのだが)

特捜部FD書き換えの記事は、そのすっぱ抜きではなく、入手したFDの解析を自ら依頼して記事の根拠としたことに注目すべきだ。自ら科学的な調査をするという手法は、ミートホープの牛肉ミンチ偽装事件でも使われた。
自らの見識で書くという姿勢は、1年生記者が主観を交えて書いて叱られたときに失われてしまう。その結果、都合のいいコメンテータを探して、期待するような談話をとって事とするのが、大部分の記者だ。(もう一つの問題は、自分が分からないことを、読者にも分からないからという言い訳をして、なかったことにしてしまうことだ)

担当記者の自慢話のほかには、業界に新しい技法やノウハウをほとんど残していないリクルート事件報道が受賞していないのは、全く問題ではない(社内表彰でもしておけ)。ただ、新聞協会賞が結局運不運で語られてしまうなら、レコード大賞化が進むだけだ。

ボストングローブは有料と無料の双子サイトに

NYTimesが経営するボストングローブ紙が、現行の無料サイトboston.comと有料サイトBostonGlobe.comの二本立てに2011年から移行することを発表した。Boston Globe Press Release

無料のBoston.comは一般ニュースのほか、旅行、レストラン、催し物情報のサイトになる。新設されるBostonGlobe.comでは、プリント版に似せたインターフェイスを採用し、グローブの記者のすべての記事、マルチメディアコンテンツを閲覧できるようにする。プリント版の購読者は追加料金なしで利用できる。スマートフォンやタブレット向けにも出力される予定。

親会社のNYTimesが採用するといわれているメーター制を採用しないのは、Boston.comが当初から新聞を超えたボストンの総合情報サイトとして運営されてきたからだ。